研究課題/領域番号 |
26380017
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
溜箭 将之 立教大学, 法学部, 教授 (70323623)
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研究分担者 |
板持 研吾 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (20632227)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 裁判 / 権力性 / 仲裁 / 代替的紛争解決手続 / 信託 / 比較法 / 法の伝播 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、平成28年度から29年度までのアメリカでの在外研究の成果をさらに発展させる形で研究を進めた。具体的には、前年度までの問題意識を引き継ぎ、裁判や仲裁を含めた紛争処理手続が、実体法の実現や発展とどのような関係をもってゆくか、個別の実体法分野を想定した研究を進めた。とりわけ研究が進展したのが、信託や会社法を中心とした信認法(Fiduciary Law)にかかわる検討である。 本研究費に基づく研究は、併せて受給している国際共同研究加速基金に基づく研究と相乗効果を伴いつつ進行している。平成29年にハーバード大学で行われたワークショップ“Fiduciary Law: Charting the Field”での報告をベースに、Fiduciary Principles in Japanese Lawと題した論稿を、ハーバード大学の日本法専門家J. Mark Ramseyerと共著で執筆した。Oxford Handbook of Fiduciary Lawの一章として、令和元年度中に刊行が予定されている。 また邦文では、「アメリカ流のルール破り」と題し、法の遵守と違反、違反に対する裁判手続を通じた法の実現のあり方を日米で対比し、この比較から得られる視座が世界的な広がりをもつことについての問題提起を含む論稿を公表した。このように、本科研費での研究は、海外研究で得られた問題意識と人的ネットワークを生かしつつ、英語・邦語の成果を生みつつある。 研究分担者は、団体内部の紛争解決という観点から住宅コミュニティに関する研究成果を公表した。加えて会社内部紛争における解決の在り方に着目して研究を進め、具体的には会社倒産時の利害関係者の和解を巡る紛争処理についての研究を公表し、デラウェア州における民事手続につき和解を含めて総合的に研究し公表準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は、当初の研究実施計画において、裁判と仲裁に関わる法と実務の交錯について研究を進める予定でいた。残念ながら、仲裁に関わる方面では、当初予定した以上の成果を出すことはできていない。その理由は、国際共同研究加速基金で行った研究において、当初の計画では予期していない方面での展開が、前年度に引き続き進展していることにある。信託や会社を巡る紛争処理のあり方、とりわけ信認法理の国際的な伝播と相互作用の方面では、比較法的な広がりのある研究が進展している。 研究分担者は、アメリカ会社訴訟の中心を占めるデラウェア州衡平法裁判所の裁判制度に着目した研究を行い、ディスカバリーやクラスアクションがどのように弁護士の訴訟戦略・和解戦略と切り結ぶか、エクイティや会社法の特徴がどのように現れるか検討し、令和元年度中に公表予定である。また、平成31年1月よりイギリスでの在外研究に入り、イギリスでの同様の状況についての研究に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、平成28年8月から平成29年9月にかけての海外研究、それ以降今年度にかけての研究を継続し、成果発表に向けた活動を続けてゆく。本研究に加えて、国際共同研究加速基金も受給しているため、そちらの研究と相乗効果を上げる形で成果を出してゆく。 研究分担者は、住宅コミュニティを中心とした非営利団体および会社の内部紛争に係る裁判・ADRの在り方について研究を継続し、これまでの成果の公表を進める。平成31年1月からのイギリスでの在外研究を活かして、これまでアメリカ寄りになっていた視点を比較法的に拡張していく。研究分担者が海外研究に入ってはいるものの、研究代表者と研究分担者で可能な限り相互連携を緊密にし、より総合的な研究を目指す。具体的には、研究代表者 の裁判や紛争解決と実体法との相互関係という観点と、研究分担者の団体法・契約法をベースとした研究との知見を持ち寄り、具体的な実定法・紛争場面を想定しつつ、より高度な分野横断的な比較法研究を進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者代表者の研究に関しては、平成29年度から受給している国際共同研究加速基金で大きな研究の進展があり、そちらに研究・成果公表のウェイトがシフトした分、本基盤研究課題の研究は遅延を余儀なくされた。しかし分担研究者による破産法や会社法と裁判手続との交錯に関する調査研究は順調に進んでおり、本研究を一年度延長することによって、代表研究者と分担研究者の研究を総合し、本研究課題を総括し成果を出してゆきたい。
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