「被害」の観念は、実は文化によって異なるいわば文化的に構成された概念と言える。被害が生じたと考える際、何が被害の内容を構成しているのか、その理解をもたらした文化的要因は何か、それに伴う責任を人々はどのように認識していくのか、これらは文化によっても、状況によっても、個人によっても微妙に異なってくる。しかもやはり文化的構成物である法や裁判は、この「被害者」の認識に強く影響すると共に、逆に被害者の認識によって揺らいでいくこともある。本研究では,こうした法言説と、人々の被害、責任認知の相互関係について、医療事故や震災等を素材に検討しそのメカニズムを検証したものである。
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