研究課題/領域番号 |
26380019
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小森田 秋夫 神奈川大学, 法学部, 教授 (30103906)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 違憲審査制 / 憲法裁判所 / ポーランド法 / ロシア法 / チェコ法 / 欧州人権裁判所 |
研究実績の概要 |
1.2015年7月に、第2回ロシア東欧憲法訴訟研究会を名古屋大学において開催し、研究代表者が「ポーランド憲法法廷とヨーロッパ人権裁判所との『対話』」、連携研究者の佐藤史人が「ロシアの2014年憲法裁判所改革」と題する報告を行なった。 2.2015年9月に、ポーランドのワルシャワおよびポズナンに出張した。(1)ワルシャワにおいては、①憲法法廷のS.ヴロンコフスカ‐ヤシキェヴィチ判事からの聴き取り、②ポーランド科学アカデミー法学研究所、ワルシャワ大学図書館における資料蒐集を行なった。また、③改正された刑事訴訟法にもとづく訴訟の実態に触れるために、ワルシャワ管区裁判所において裁判の傍聴を行なった。(2)ポズナンにおいては、①アダム・ミツキェヴィチ大学において開催された「若手法理論家・法哲学者大会」に出席して違憲審査制にかかわるものを含めて報告を聴き、(2)違憲審査制の正統性に関する研究の実績のある同大学のM.スモラク教授と意見交換を行なった。 3.研究課題にかかわるケーススタディとして、前年度に着手した年金年齢をめぐる憲法法廷についての判決についての研究を継続し、「ポーランドにおける年金改革と『民主的法治国家』―議会・違憲審査制・国民投票」と題する論文にまとめた(近刊)。 4.2105年10月に行なわれた議会選挙によって民主的法治国家成立した新政権のもとで、憲法法廷裁判官の人事、憲法法廷法改正、それについての憲法法廷の判決をめぐり、欧州評議会のヴェニス委員会を巻き込んだ「憲法危機」が発生した。本研究課題に正面からかかわるこの問題について、議会選挙について分析した論文を執筆するとともに、評論の形で「議会多数派が立憲主義を踏みにじるとき―ブダペシュト・ワルシャワ・東京」と題する文章を執筆し、経過の整理を行なった(『神奈川大学評論』83号、2016年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)連携研究者および研究協力者とともに、研究グループ外にも開かれた研究会を引き続き開催した。 (2)ケーススタディを継続し、そのうちの1テーマについて論文をまとめた。 (3)2015年秋以降に生じた「憲法危機」の経過について、持続的に観察を行なった。この問題は、「〈応答モデル〉による比較分析」という本研究課題の方法が試される新たな素材である。ただし、研究期間の終了までに何らかの形で「危機」が終結する見とおしはたっていない。 (4)新たに現職の憲法法廷裁判官1名と接触することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2015年秋以降の「憲法危機」の経過を、現地調査を含めて引き続き観察する。 (2)連携研究者による現地調査(ハンガリー)および前年度に実施できなかった研究協力者による現地調査(チェコ)を実現し、比較研究のための素材を得る。 (3)「憲法危機」の発生を踏まえて、〈応答モデル〉という観点からポーランドの違憲審査制の歴史的展開について改めて振り返り、かねてから執筆を進めている単著の中に本研究の成果を位置づける。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)連携研究者がモスクワにおける長期在外研究に従事したため、予定していた外国旅費(モスクワ)が不要となった。 (2)大学院学生である研究協力者が予定していた現地調査(チェコのブルノ)の時期を、本人の研究計画上の理由から次年度に延期することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画に加え、研究協力者による現地調査(ブルノ)を実施する。
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