本研究は、日本中世の裁判手続過程における「判決文書」および「訴状・陳状」を主な素材として、「判決の理由・根拠」と、訴訟両当事者による「主張の内容」および主張の根拠とされた「証拠」の間には如何なる関係があるのかについて法制史的に解明することを課題とする。具体的には、御成敗式目35条の規定する「召文違背」の事案に関して、不応訴の態度を主張する訴訟当事者は単に式目35条が適用された判決を得ることを最終的な目標としておらず、同条の適用により本来の要求を実現しようとしていたこと、裁判所の側も訴訟当事者の本来の要求に対する理非を適正に判断する態度をとっていたこと、などの仮説を提示するにいたった。
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