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2015 年度 実施状況報告書

日本の改正刑法仮案が韓国刑法に及ぼした影響に関する比較法的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26380024
研究機関神戸学院大学

研究代表者

崔 鍾植  神戸学院大学, 法学部, 研究員 (20380652)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード改正刑法仮案 / 韓国刑法 / 姦通罪 / 違憲判決 / 国民参与刑事裁判 / 陪審員の独立性
研究実績の概要

1.平成27年度の研究目的と計画及び方法に従って、「韓国において日本改正刑法仮案を継受した歴史的背景や刑法制定当時の経緯及び具体的な継受の内容と範囲、その運用状況についての比較調査と文献収集」とその分析を行った。
2.関連資料及び情報収集のための出張として、刑法学会第93回大会参加(東京)、韓国矯正関係機関の参観(ソウル)、第4回東アジア法社会学会参加(東京)、韓国の刑事裁判等傍聴及び資料収集(釜山、ソウルなど)の研究活動を行った。
3.一部の研究成果の発表:(1)「姦通罪の違憲決定から見た韓国おける性意識の変化」:2015年2月、日本の改正刑法仮案を継受して以来、定められていた姦通罪について憲法裁判所から憲法違反の判決が下された。この判決は、性道徳に刑法が介入・強制してはいけないという一般原則に従った判決として大きな意味がある。つまり、伝統的な儒教の強い影響からの脱却であるという評価ができる(単著、『神戸学院法学』第45巻1号2015年6月号掲載)。
(2)「An Examination on Juries’ Independence from the Influence of Professional Judges in Korean Jury System(韓国の国民参与刑事裁判において職業裁判官からの陪審員団の独立性に関する検討)」:この論文は、第4回東アジア法社会学会(東京、早稲田大学)にて発表を行ったものとして、韓国における新しい試みである「国民参与刑事裁判」制度に関して、同制度の実体について分析し、実際の裁判の中で、陪審員にどのくらい独立性を保障しているかについて論じた(単著、『US-CHINA LAW REVIEW』V.12, N.12, 2015.12.)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1)1894年と1912年頃、日本の刑法が朝鮮に施行されるまでの日本の刑事法の移植の経緯に関する調査:朝鮮王朝末の脆弱になった国内の情勢によって朝鮮国独自の刑法典の制定には失敗し、ロシアや清との覇権争いで勝利を勝ち取った日本が朝鮮半島において植民地化の主導権を掌握し、ついに朝鮮を合併することによって、日本の刑事法が差別的でありながらも朝鮮半島にも施行されることになった(朝鮮刑事令の公布)ことが分かった(おおむね当初の計画通り進んだ)。
(2)1953年刑法制定当時の時代的背景と新刑法典の制定の経緯に関する調査:1945年8月、南側に韓国政府が樹立されてからもしばらくの間日本の刑法をそのまま運用せざるを得なかった。これは、予想しなかった他律的な解放によって独自的な法律システムを備える時間的余裕がなかったためであった。その後、刑事法の制定作業が始まったが、韓国戦争が勃発してしまい、国会での作業も十分ではなかった背景があった。このような状況で、韓国の国会が、共産主義体制の北朝鮮との戦争の中で、社会秩序維持や対共産主義の刑法典を速やかに作り出せるために、モデルとしたことが「日本改正刑法仮案」であったのではないかと考えられる(おおむね当初の計画通り進んだ)。
(3)このように、平成27年度は、当初の研究計画と方法に従っておおむね順調に研究活動を行ったが、その結果をまとめて論文として公表する作業が遅れているところから、自己点検としては、当初の計画に照らしてみれば全体的にはやや遅れていると評価せざるを得ない。ただ、韓国刑法上の姦通罪に対して違憲判決が下されたことに対する論文が発表できた点、また、韓国の刑事司法制度の改革の大きな柱の一つである、「国民参与刑事裁判」制度に関する論文を国際学会で報告を行い、それを英文雑誌に掲載できた点からすれば、それなりの成果があったと評価することができる。

今後の研究の推進方策

(1)平成28年度は、改正刑法仮案が韓国刑法に及ぼした影響の功過、その現代的意義についての比較法的検討することによって、日韓刑法改正の課題と展望を提示しようとする。特に、韓国の新刑法典が制定された時は、共産主義の北朝鮮との激しい戦争の最中であった点に注目し、社会秩序維持、国家安全確立という当時情勢の切迫さがどのように新刑法典の制定に影響を及ぼしたかについて検討し、その結果をまとめたい。
(2)平成28年度はこの研究テーマにおける最終年度であるので、平成26年度と27年度の研究成果を踏まえつつ、結論を導き出して日韓それぞれの刑法発展の望ましい方向性を明らかにしたい。
(3)その研究成果については、日韓の研究会や学会で報告すると同時に、国際学会誌にも英文の論文として発表できるよう努める。また、平成27年度にも制作できなかった科研用のHomepageを作成しこれらの研究成果を広報しようと計画を立てている。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度に計画していた、Homepage制作ができなかったことによる繰り越しである。

次年度使用額の使用計画

繰り越しされた金額については、平成28年度に研究成果をより効果的に広く知らせるために専用のHomepageを制作する予定であるが、その費用に充てる計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち謝辞記載あり 2件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 姦通罪の違憲決定から見た韓国における性意識の変化2015

    • 著者名/発表者名
      崔 鍾植
    • 雑誌名

      『神戸学院法学』

      巻: 第45巻1号 ページ: 39~65

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] An Examination on Juries’ Independence from the Influence of Professional Judges in Korean Jury System2015

    • 著者名/発表者名
      Jong-Sik Choi
    • 雑誌名

      『US-CHINA LAW REVIEW』

      巻: 12巻12号 ページ: 937~950

    • DOI

      10.17265/1548-6605

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] An Examination on Juries’ Independence from the Influence of Professional Judges in Korean Jury System2015

    • 著者名/発表者名
      崔 鍾植
    • 学会等名
      第4回東アジア法社会学会
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2015-08-05
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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