研究課題/領域番号 |
26380026
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
日野 辰哉 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (90431428)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 公的規制 / 補充性 / 警察規制 / 危険 / 私法秩序 / 契約 |
研究実績の概要 |
H26年度では,文献収集と文献調査がおこなわれた.文献調査は日本,フランスについての研究が進められた. 日本については,まず,タクシー事業規制をめぐる法令の動向,および,下級審判決が網羅的に調査され,H26施行の新タクシー特措法の問題点を指摘した.規制のあり方として,行政処分に際しての裁量権行使の適否を司法が如何にコントロールするのか,という点に関心を限定するのではなく,規制執行という行政プロセスのあり方にまで視野を広げ,手続および組織のあり方(適正手続とそれを実現するための組織のあり方)を問題にする必要があることを確認した.これは,フランスにおける原子力規制を調査するなかでも確認された論点でもある.また,現在執筆段階のものではあるが,労働契約において使用者が労働者に対して負う安全配慮義務との関係性を視野に入れながら,労働安全衛生法などの公法規制の不作為義務違反がいかに形成されるのか,二度の判例報告とそこでの質疑応答を踏まえて,より慎重な検討をおこなっている.公的規制の補充性を考える場合,労働安全規制は,その補充性が相対的に弱いケースと考えることができる. フランスについては,原子力の安全規制の現状把握とその意義を明らかにするべく文献調査をおこない,比較法学会での総会シンポジウムにて報告をおこない,質疑応答を経たうえで,比較法研究に論文を掲載した.日本とは異なり原発由来の電気が,他のエネルギー由来の電気と競争関係にあるフランスの原子力安全規制の意義,とりわけ,被規制者との一定の距離を確保するための手続法・組織法上の工夫の意味を明らかにすることは,規制者・被規制者・規制により利益を享受する者という三者間の関係性を考えるうえで,重要なヒントを得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フランス法については,警察規制のあり方,とりわけ,経済活動に対する規制については,「公の自由」(日本の基本的人権に相当する)としての営業の自由から(公の自由ではないものの)「競争自由」への判例の展開とそこでの学説の動向を明らかにする作業にようやく取りかかれる状態であり,当初の計画通りの進捗状況とはいえない. ドイツ法については,まだ,未着手の状況で,来年度のドイツなどの各国での面接調査を念頭におくと,調査事項を絞れる程度には,現在のドイツが抱えている規制法上の問題を把握しなければならない.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の前半は,主としてドイツ法の文献調査に力を入れながら,フランス法についてまだ調査がなされていない事項,すなわち,警察規制とその変容をめぐるフランス公法学説の研究をおこないたい.ドイツ法についても,経済活動に対する行政規制の変容(とりわけ,市場の競争に配慮した規制の変容に焦点をおきつつ)とそれに対する学説の動向を明らかにしたい. 本年の後半部分では,イギリス法の調査に力点を置く.すなわち,イギリス法における市場競争を意識した公的規制の変遷とそれを反映した判例の調査とそれに対する学説の動向を明らかにしたい.
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