戦後ドイツ連邦共和国における憲法学の形成過程について、本年度は以下の複数の視角から検討を進めた。第一に、ワイマール期のCarl Schmittの憲法概念の特質と、その弟子たち(Ernst Rudolf HuberやErnst Forsthoff)による受容という見地から、ワイマールと戦後との間の連続性と変化の一側面を照射しようと試み、論文として執筆した。第二に、同じくワイマール期憲法学と戦後憲法学の関係を、「政治」ないし「政治的なもの」という論点への対応という分析視角から整理し、その変化の意味するものを考察する論文を執筆した。第三に、日本における人権の私人間効力論とドイツにおけるそれとの間の文脈の違いを分析し、1950年代以降のドイツにおける基本権判例の発展を支える特有の背景と、これに照らした日本の憲法論の特質を検討し、論文として執筆した。以上三つは、次年度以降に公表される予定である。第四に、現代におけるフランス憲法学とドイツ憲法学の理論的活性化傾向と、この際の両国間の差異について論じる書評論文を執筆したが、この中で、これに先立つ戦後期ドイツとフランスとの憲法学のあり方の差異に関しても一定の検討を行った。
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