研究実績の概要 |
平成27年度は,前年度に引き続き,グローバル化と行政法に関する研究を中心に進めた。具体的には,次の3点の実績を上げることができた。 第一に,グローバル化と行政法に関する日本の学説を分析する論文を執筆し,公表した(興津征雄「グローバル化社会と行政法」法律時報88巻2号)。この論文においては,ひとえにグローバル化と行政法に関する学説であっても,あくまでも国家を中心に考えるか,それともグローバル・ガバナンスのような超国家的秩序を中心に考えるかによって,スタンスに大きな違いがあり,それが学説の内容にも反映していることが明らかにされた。 第二に,グローバル・ガバナンスの民主的正統性を探究する前提として,正統性および民主主義の概念および制度そのものについて考察する論文を執筆した(興津征雄「行政過程の正統性と民主主義」小早川光郎先生古希記念『現代行政法の構造と展開』平成28年刊行予定)。 第三に,グローバル行政法についてこれまで得られた知見を国際ワークショップで報告し,それに基づいた英語論文を執筆した(Yukio Okitsu, Accountability as a Key Concept for Global Administrative Law, Kobe University Law Review, Vol. 49, forthcoming 2016)。これに対し,外国人研究者からフィードバックを受けることができた。 また,前年度より引き続き,グローバル行政法研究の世界的な拠点であるニューヨーク大学法科大学院において在外研究に従事した(平成27年7月まで)。当地における第一線の研究者と知的交流を持つことができ,研究の遂行にあたって裨益するところが大であった。
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