最終年度である平成28年度は,前2年度に引き続き,グローバル化と行政法に関する研究を中心に進めた。具体的には,以下の成果を得た。 第一に,グローバル・ガバナンスの民主的正統性を探究する前提として,行政過程において政策決定の正統性がどのように担保されうるか(またはされないか)について,民主主義に関する制度的・概念的考察を踏まえて検討した(「行政過程の正統性と民主主義」)。また,そこでの検討結果のグローバル・ガバナンスまたは国際機関への応用を試みた(「国際機関の民主的正統性」,"Comment on Anne Peters' "Dual Democracy"","The Pluralization of Publicness in Global Administrative Law")。 第二に,行政過程における政策決定およびその司法審査のあり方を具体的に考察し,民主的正統性との関係で課題を展望した(「計画の合理性と事業の公共性」,「行政法研究者の立場から」)。 第三に,新たな研究領域として,仲裁(私的紛争解決の正統性という観点から)および国籍(民主的正統性の基体の構成原理という観点から)についての研究を開始し,一定の視座を得ることができた(「コメント:行政法の観点から」,「在留外国人の地方選挙権について」)。 研究期間を通じて,民主的正統性およびそれと密接に関連するアカウンタビリティの概念について,考察の考察を深めることができ,当初の研究期間を1年残して,所期の目的を達成することができたと考えている。平成29年度からは,前年度応募により採択された基盤研究(B)「グローバル化のもとでの政策決定・法政策の正統性」を開始することになり,本研究の成果をさらに発展させる。
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