研究課題/領域番号 |
26380037
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
神山 弘行 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00361452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 租税法 / 財政法 / 法と経済学 / 国際情報交換 / オーストラリア |
研究実績の概要 |
本研究課題は,租税法と財政法の協働により,将来世代に過度の負担を強いることなく,危機対応(財政危機,経済危機,通貨危機,甚大な自然災害などへの対応)の財源を確保するための新たな法的枠組みを探求することを目的としている。 研究計画の初年度である平成26年度は,研究計画書に記載した第一段階(関連法制度の事実解明的分析の体系化)を推進するとともに,第二段階(法制度の規範的分析の再構築)の導入的検討を行った。 具体的な研究成果としては,世代間衡平の観点から,租税法制度・財政法制度に関する事実開明的分析及び導入的な規範的分析を遂行する過程において,租税制度と社会保障制度を一体的に把握する必要があるとの観点から,神山弘行「諸外国の年金制度(1)アメリカの年金制度」信託261号140-158頁(2015年)を執筆・公刊した。これは準備的論攷であるものの,本研究課題が当初想定していた危機対応に関する「租税法と財政法」の統合的検討から,今後は危機対応に関する「租税法と財政法及び社会保障法」の統合的検討へと研究課題の分析対象を拡大させ,研究を進展させることが,上記研究目的の達成にとってより有益であるとの視座を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,研究計画の初年度であり,研究計画書に記載した,平成26年度に遂行すべき第一段階(法制度の事実解明的分析の体系化)の遂行および第二段階(法制度の規範的分析の再構築)の導入的検討を概ね順調に遂行することができた。 また,「9. 研究実績の概要」で述べたように,分析対象を「租税法と財政法」から「租税法と財政法及び社会保障法」に拡大することにより,今後の研究が当初計画よりも(研究範囲および深度の両面において)さらに充実した内容となることが期待される。 なお,研究費の効率的活用の観点から,平成26年度末に予定されていた海外聞取調査等の一部を翌年度以降に変更するとともに,平成27年度以降に行う予定であった研究計画の第二段階および関連調査について,平成27年2月開催の国際シンポジウム(Sydney-Tokyo Tax Conference)の機会を活用することで一部を前倒しして遂行した。これは,研究費を効率的に活用する観点から行った調査順序の一部入替えであり,研究計画全体に遅れを生じさせるものではない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は,研究計画の第二段階の作業(法制度の規範的分析の再構築)を完了させるとともに,前年度までの作業を基礎として研究計画の第三段階(租税法と財政法の統合)及び第四段階(最適な法制度パッケージの探求)を順次遂行する。 具体的には,日本の現金主義的単年度予算制度のもとでは,公的救済の費用が正確に反映れず,政策の意思決定に歪みを生じさせている可能性が高いところ,その解決策として諸外国で導入されている発生主義予算制度や複数年度予算制度について,考察を加える予定である。その上で,世代間でのリスクの最適分配を可能にするための法的枠組みとして,発生主義予算(フローの統制)と基金制度(ストックの統制)の統合について検討を進めることになる。 また,海外調査については,平成26年度末に聞取調査等を予定していたアメリカ及びイギリスに代えて,平成27年2月に開催された国際シンポジウムの機会を利用する形でオーストラリアに関する文献調査及び聞取調査の一部を前倒しで遂行したことから,平成27年度以降は,研究計画書に記載したオーストラリア以外の調査対象国(アメリカ,イギリス,ニュージーランド,オランダ等)についての調査の比重が相対的に高まることになる。なお,「11. 現在までの達成度」の欄にも記載したとおり,上記の一部修正は,研究資金を効率的に活用する観点から行われた調査対象国の調査順序の入替えであり,研究計画全体に遅れを生じさせるものではない。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を効率的に活用するという観点から,平成26年度末に予定をしていたアメリカおよびイギリスでの聞取調査等を含む海外調査を,平成27年度以降に変更するとともに,当初は平成27年度以降に予定されていたオーストラリアに関する文献調査及び聞取調査の一部を国際シンポジウム(平成27年2月開催,Sydney-Tokyo Tax Conference)の機会を活用して,前倒的に遂行したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降は,相対的に海外調査の比重が高まることから,それにともなう海外旅費及び外国語文献・資料の入手に研究費を使用することが見込まれる。 加えて,研究計画の第二段階および第三段階を本格的に遂行することから,租税法のみならず財政法や経済学に関する国内外の文献資料の収集を行うことになる(また,先述のように,研究成果をより充実したものとするために,必要に応じて社会保障法に関連する国内外の文献資料の収集も行うことになる)。
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