研究課題/領域番号 |
26380037
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
神山 弘行 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (00361452)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 租税法 / 財政法 / 法と経済学 / 世代間衡平 / 基金 / 公債 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,租税法と財政法の協働により,将来世代に過度の負担を強いることなく,危機対応の財源確保の新たな法的枠組みを探究することを最終目的としている。 研究計画の2年目である平成27年度は,平成26年度の研究成果を踏まえて,研究計画書に記載した第一段階(事実解明的分析の体系化)及び第二段階(規範的分析の再構築)の作業を進展させるとともに,第三段階の一部分(世代間でのリスク最適分配のあり方)に関する作業を遂行した。 具体的には,世代間衡平及び世代内衡平の観点から,資産の世代間移転と資産移転課税の関係について,近年の相続税・贈与税改正を題材にしつつ,(1)機会の平等,(2)自己所有権テーゼ,(3)厚生主義という異なる3つの法制度設計視座から,神山弘行「贈与税と相続税の関係に関する覚書」税研 31巻4号30-37頁(2015年)を執筆・公刊した。さらに,世代間でのリスク最適分配という観点から,経済危機や大規模災害への公的支援の財源確保を念頭に,基金・保険・公債を分析対象として,国家作用にともなう費用負担手法について時間軸の観点から考察を深めたところ,その成果の一部分を神山弘行「国家作用の費用負担と時間軸-基金・保険・公債」法律時報88巻2号23-30頁(2016年)として公刊した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,全4年間の研究計画の2年度目であり,研究計画書に記載した平成27年度までに遂行すべき第一段階から第二段階の作業の遂行及び,第三段階の導入的検討を概ね順調に遂行することができた。スケジュールの関係で,聞取調査の一部を平成28年度以降に変更したものの,本来は平成28年度以降に実施予定であった研究計画の第三段階の部分について,その一部を前倒しして遂行することで,研究計画全体に遅れが生じないように対応した。なお順序の一部入れ替えによるプラスの効果として,聞取調査よりも理論分析を先行させることを通じて,研究対象に関する潜在的論点をより明確化することができたところ,今後の聞取調査をより効率的かつ効果的に遂行することが可能となった点をあげることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は,これまで実施してきた研究計画の第一段階及び第二段階での研究成果をもとに,研究計画の第三段階全体(租税法と財政法の統合)の完成に向けて研究を進展させるとともに,第四段階(最適な法制度パッケージの探究)を随時遂行することになる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた聞取調査を含む海外調査につき,潜在的論点の明確化をするべく理論的検討を先行させることで,海外調査を平成28年度以降に変更したため。また,平成27年春に(研究計画作成時には予期しなかった)所属大学の異動にともない,聞取調査・文献収集及び各種研究会等への参加がより効率的に行えるようになったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度以降は,相対的に海外調査の比重が高まることから,それに伴う海外旅費及び外国語文献・資料の入手に研究費を使用することが見込まれる。加えて,研究計画の第三段階の進展及び第四段階への移行に伴い,租税法や財政法のみならず,経済学や国内外の文献資料の収集を行うことになる。
|