前半は、カリフォルニアに滞在し、アメリカの環境規制についてリサーチをした。同州では、気候変動防止政策、再生可能エネルギー政策の進展が著しく、予定をやや変更し、当該分野の政策動向をフォローすることとした。しかし、これらの政策の遂行にあたっては、気候変動対策の費用負担、再生可能エネルギーの導入に伴う費用負担を誰が担うべきかということが重要な政策的・法的問題となっており、当初の研究計画と離れるものではない。 年度後半は、法律時報に日本の規制負担(とくに原因者負担)に関する論文を公表し、また、別の論文(環境環境法における原因者負担原則に関する分析)を執筆した。後者の論文は、2016年8月に公刊される予定である。 前者の論文については、人的公用負担のひとつの形態としての原因者負担の考え方が、公害問題が深刻であった70年代にどのように変容を遂げて公害・環境法の分野に導入され定着していったかということを中心に分析した。 後者の論文においては、1環境法上の原因者負担という考え方が公用負担法、損害賠償法、警察法、法と経済学に起源を有していることを確認し、2それぞれのバージョンの原因者負担原則について規範的観点から検討すべき課題を示し、3そのうちの間接原因者への帰責をどういう基準で行い、どのような基準により責任の範囲を画するかという問題について、規範的観点から検討を加えた。そのほかの問題は、別の論文で検討する予定である。
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