本研究は、申請者がこれまで行ってきた環境法上の責任(汚染防止措置、環境保全措置、浄化措置等にかかる規制負担)の分配のあり方、その法的な根拠づけに関する研究に加え、①新たな各論分野を研究対象として追加し、②比較法の対象国を増やすことによって、総論的考察の素材を充実させることを目的とするものであった。①に関しては、たとえば、農業分野の環境保全に関する研究(拙稿「阿蘇における農村と都市をむすぶ営みとその周辺」楜澤能生ほか編『現代都市法の課題と展望』(2018年)387以下)、廃棄物・リサイクル分野(拙稿「バーゼル法改正」環境と公害47巻3号など)やエネルギー・環境法の分野(「石炭火力発電所の新増設と環境影響評価(1)(2・完)」自治研究92巻11号・93巻1号)における規制負担のあり方に関する論文を公表することができた。②に関しては、U.C Berkeleyにおける在外研究により、アメリカ法(カリフォルニア州法)における温暖化対策、再生可能エネルギー政策に伴う規制負担のあり方に関する研究を行うことができた。また、環境法各論における規制負担のあり方に関する個別的研究を踏まえて、公用負担法の分野を中心に、行政分野横断的な規制負担のあり方に関する理論的な貢献を目指す論文2点を公表することができた(拙稿「環境法上の原因者負担原則に関する一考察」宇賀克也=交告尚史編『現代行政法の構造と展開』(2016年)757頁以下、「国家作用と原因者による費用負担」法律時報88巻2号)。
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