研究課題/領域番号 |
26380041
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 徹也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10273393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自己株式の取得 / 欠損金 / 自己株式の取得価額 / 株式移転 / ToSTNeT-3 |
研究実績の概要 |
本年は、主として、自己株式の取得に関連して最近生じてきている問題を取り上げ、これらをどちらかといえば立法論の視点から検討した。具体的には次の3つの項目((1)主として株主側における課税の問題、(2)主として法人側における課税の問題、(3)外形標準課税における問題に関する項目)を取り上げて、検討を行った。 最初に取り上げた項目は、自己株式が比例的に取得されるケースである。事案としては、日産事件として知られる東京地裁平成24年11月28日判決を題材とした。自己株式取得に関する課税ついて、会社法上の分配可能額規制を無視しないという立場をとる限り、日産事件における株式譲渡損失を解釈によって否認することは困難であり、比例的分配を配当として扱うような立法の改正が望まれることが判明した。 2番目の項目として、適格株式移転において、既に保有していた自己株式に割り当てられた株式移転完全親法人株式の取得価額がゼロとされる問題を扱った。事案としては、東京地裁平成23年10月11日判決(特種東海製紙事件) を取り上げ、立法論として、法人税法施行令8条1項1号ヘを削除するとともに、それと整合性を保つために同119条1項10号に「自己が有していた自己の株式を株式移転完全親法人に取得された場合を除く」という内容の一文を挿入することを提唱した。 最後の項目として、市場を通した自己株式の取得が地方税法の外形標準課税に与える影響について取り上げ、市場(特にToSTNeT-3)を通した自己株式取得により、法人の資本金等の額の額が大幅に減少し、それに伴って一定程度の事業税が減額されるような場合については、それに対処するための立法上の手当を考えるべきという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①株式移転において、既に取得していた自己株式に対して、株式移転完全親法人の株式が割り当てられた場合の当該親法人株式の取得価額の問題、②会社法上の財源規制のために、自己株式取得の対価が当該株式の時価に満たない場合の寄附金該当性の問題、③自己株式取得による資本金等の額の減少が、地方税の外形標準課税に与える影響という3つの問題について、それぞれに関係する日本の裁判例を検討し、一定の結論を導くことはできた。その意味では、計画は当初の予定よりやや早く進んでいるといえる(実際の検討は②①③の順番で行った)。 一方で、上記3つの問題をきわめて単純化して述べるなら、①は自己株式の資産性の問題、②は自己株式の比例的取得の問題、③は資本金等の額の基準性の問題であるが、それぞれについて、より詳細な理論的検討、あるいは外国法や実証分析に基づくより突っ込んだ検証を行う必要を感じている。その意味では、当初の計画よりやや遅れているともいえる。したがって、トータルでは、プラスマイナスを勘案して、当初の計画からみれば概ね順調に進んでいると考えられる。 また、自己株式については、上記①~③の発展型ともいえる新たな問題(とりわけ自己株式を用いた役員報酬に関する問題)も生じてきており、引き続き、検討の対象として重要であると感じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度、十分に行うことのできなかった(1)外国法に関するリサーチを重点的に行うと同時に、(2)自己株式を用いた役員報酬に関する問題を取り上げて研究を進める。 具体的には、外国法、とりわけアメリカ法およびイギリス法(さらに可能であればOECD諸国の法)に関する文献を講読することに加え、(昨年度行うことができなかった)海外への調査を行うことで、外国法に関するリサーチを行う。以上が(1)に関する今後の研究の推進方策である。 (2)に関する推進方策は以下の通りである。まず、会社法上の要請として、自己株式取得の効用(自己株式の利用価値)および自己株式を報酬として使用する理由について検討する(前者いついては、ROE操作や株主への利益還元、後者については、外国人株主対策や役員へのインセンティブが予想される)。次に、自社株報酬スキームの中身(信託型を用いる理由等)を概観した後、自社株報酬スキームへの現行法における課税とその問題点について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査研究旅行が十分に実行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、昨年度以上に、外国法の文献調達を充実させ、かつ調査研究旅行を実施する。
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