法人税法22条5項が、出資を資本等取引として非課税にしている理由について検討した。 出資により株式を発行する法人には、株主に対して配当、残余財産の分配さらには議決権を行使させる義務等を負っていることになる。つまり、無償で出資金を受け取っているのではなく、義務と引き替えに株式を発行しているのだから、そもそも課税される取引ではないと考えることが一応は可能である。これは借入によって金銭を取得する場合と同じように、受け入れた金銭と同額の債務が生じるため課税されないという考え方である。 しかし、配当や残余財産分配義務については、出資を受け入れた段階で債務が確定しているとはいえないし、議決権を行使させる義務は抽象的で金銭的な評価は難しい。これらの諸義務と株主の出資額が等価であるというのは観念的に過ぎる。実定法にみなし規定があればよいが、実際には存在しない。 また、なぜ同法22条5項が存在するのかという問いにも晒される。もし債務と発行された株式の価値が等しいとするならば、同法22条5項によって、わざわざ出資を非課税とする理由はない。仮に、同法22条5項を確認規定として捉えると、法人にとって支払配当が損金に算入できないことを説明することも困難となる。したがって、同法22条5項は、そのままでは課税される可能性のある出資という取引を非課税にするために(あるいは支払配当という取引の損金算入性を否定するために)存在する創設規定と捉える方が理解しやすい。 同法22条が創設的に出資を非課税とした理由は、むしろ法人税の課税ベースから説明すべきである。法人税の課税対象が株主の目から見たリターンであれば、出資を上回る利益がそこでいうリターンであり、もし出資部分に法人税を課してしまえば、原資に対する課税となる。これを避けるために、出資を非課税としているという説明である。
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