最終年度には,①研究の総括として国際セミナーを開催 および②研究課題に即した論文の公表 ③デジタルエコノミーに即応した税制を持つオランダでの実地調査 を行った。①の開催準備は,研究代表者と研究分担者が協力して行った。 ①について,2017年10月27日に明治学院大学にてRichard Krever教授(西オーストラリア大学)を招へいし,「ポスト・モダン消費税に向けて」というテーマでセミナーを開催した。地域横断的に世界中の消費税を実地で研究しているKrever教授の視点を通した「フェアな消費税の在り方」について,研究者,実務家およびこの分野を学ぶ大学院生とともに議論を行った(参加人数はゲストを含め19名)。 ②について,次に,2017年度に本研究課題について公表した研究代表者の論文(単著)は,以下のとおりである。(a)「消費税と脱税」木村弘之亮先生古稀記念論文集編集委員会編『公法の理論と体系思考』・・・相対的に消費税率の高いEU域内では,消費税の脱税スキームが蔓延している。欧州司法裁判所の判例を用いてその実態を概観し,各加盟国の対策について考察を加えた。(b)「消費課税―国境を越えるデジタル取引をめぐって」金子宏監修『現代租税法講座・国際課税』・・・国境を越えるデジタルサービスに対する消費課税ルールの不備が,フェアな課税を阻んでいることに鑑み,2016年10月から日本でも導入されるリバースチャージ制度の課題について検討を行った。(c)「金融サービスに対する消費課税」論究ジュリスト24号・・・Krever教授の近著 “VAT and Financial Services” を素材に,金融サービス領域での仕入税額控除の遮断について論じた。 ③3月にアムステルダムのIBFDでオランダ税制の調査を行った。
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