本研究は、東日本大震災の経験に基づき、情報の自由で豊富な流通に依拠する自省的な社会の構築をその制度化の観点から探求した。そのような自省的な社会では討議され熟慮された意見が市民の間で広く共有されるが、そうした状態の実現を促進する制度構築のために、複数のメディアが複数主体で併存する状況を維持することの重要性、そして多数決主義とは異なる原理に基づく制度や機関を公共の意思決定過程に組み込むことの不可欠性を解明した。さらに情報の自由な流通の副作用である偏見や憎悪に基づく表現の影響力を表現の禁止ではなく教育や対抗の表現行為で適切に統制する条件を考察した。
|