近年のわが国においては、主として原発避難訴訟等の国家賠償請求訴訟において、行政責任の拡大が見られる。また、行政責任の拡大は行政の義務の範囲も拡大しており、例えば、調査義務や情報提供義務違反がその例である。このような行政責任の拡大は、被害救済にはつながるものの、行政の過剰な介入を生じるおそれがあることから、調整システムが必要である。本研究で比較の対象としたフランス法においては、行政責任が拡大した領域において、責任要件の制約によって行政責任を制約する一方、フォート不要責任や救済基金の設立によって救済も拡大しており、今後の行政責任の調整システムのモデルとなり得ると考えられる。
|