本年度は、本研究の2つの研究課題のうち、「信仰行為二分論」に対する植民地・憲法起草時代における信教の自由論の影響(研究課題(1))に関するこれまでの作業をも踏まえつつ、連邦最高裁における「信仰行為二分論」の形成過程(研究課題(2))について分析・検討する作業を重点的に行った。具体的には、特に、ジェファソンによる1802年のダンベリ・バプティスト書簡を引用しつつ連邦最高裁における「信仰行為二分論」の萌芽的思考を示したとされる1878年のReynolds v. United Statesの意義について、同時代における州裁判所や研究者による信教の自由解釈との比較検討などを通じて、その伝統的な理解・評価を見直す作業を行った。 その結果、これまで同判決については信仰を理由とする一般法適用免除の可能性を否定した判決であるとの理解が有力であったが、同時代における信教の自由解釈をめぐる動向や同判決で問題となった一夫多妻制に対する法規制をめぐる評価などに鑑みると、同判決については必ずしも信仰を理由とする一般法適用免除の可能性を全面的に否定したものではないと解する余地もあり、かかる視点から「信仰行為二分論」の意義を見直す必要性があるとの知見を得た。もっとも未だ論文等の形で公表するには至っておらず、今後できるだけ早い段階での公表を目指したい。 なお、2016年9月より所属研究機関の長期海外研究員制度に基づきヴァージニア大学ロースクールにて在外研究に従事しており、本年度の本研究も当該在外研究の一環として行うことができた。
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