本研究「持続可能な都市開発における公益間調整の法構造分析-日独比較研究を中心として」は,近時,環境法と都市法の融合領域となっている都市開発分野を素材とする比較法研究を通じて,複合的な公益間調整が要請される地域再開発において,環境公益を含む多様な公益の共存を目指す法政策について,そのメカニズムと法的特色を明らかにすることを目的とする。 今年度は,本研究の最終年度として,これまでに実施してきた研究を踏まえて,日本法の実態調査を進めたほか,前年度までに実施できなかった追加調査を行って,日独比較の検討を行った。 日本法については,前年度に行った制度理論面からの研究にくわえて,実態調査研究を実施した。近年の地方創生への取り組み等との関連性を重視して,複数の関連行政部局のほか,業界団体や市民団体等についても調査対象とした。また,開発需要と環境配慮のコンフリクトが人口減少の進行する地方で顕在化していることから,北海道や九州などの特徴的な自治体を中心に現地調査として,行政担当者へのヒアリング調査を実施し,実際の制度運用について現状分析を行った。実態調査では,コンパクトシティや再生可能エネルギー導入推進に向けた動向など地域特性を反映した取り組みなど,新しい動向の把握に努めた。 日独比較検討に先駆けて,前年度までの研究遂行で不足していた海外調査を行った。最新の政策文書や学術文献等の調査にくわえ,前年度までに調査した都市縮小型再開発の動向について把握を進めた。また,比較的早い時期に再開発が進められた地域の現状把握を目的として,ドイツの大都市近郊地域を中心として,現地視察を含めて調査を実施した。以上の成果を踏まえて,日独両国の共通点・相違点およびその要因を分析した。
|