研究実績の概要 |
本年度は2つの事項について検討を進めた。第1に、国連平和維持分野における地域的機関の役割を分析するため、国連と地域的機関の関係について、とりわけ国連とアフリカ連合(AU)の関係について実証的な考察を行った。その検討結果の一部は、"New Relationship between the United Nations and Regional Organizations in Peace and Security: A Case of the African Union", in S.Hamamoto, H.Sakai & A.Shibata (eds.), "L'etre situe", Effectiveness and Purposes of International Law. Essays in Honour of Professor Ryuichi Ida (Brill, 2015), pp.165-189.にまとめられ、AUの側には文書上、国連の権限を否定しうる要因が定められているものの、実践上は国連もAUもお互いの権限を尊重し合っており、そしてそれはアフリカ大陸においてはAUに第一義的責任があり、国際の平和と安全の維持に関しては国連安保理に主要な責任があるというかたちで了解がなされていること、これを制度的に担保するため両機関では継続的な対話が様々なレベルで行われていることが明らかにされた。 第2に、国連憲章第7章に基づく行動を認められた「強化されたPKO」の事例として国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)を取り上げ、特に日本の自衛隊の参加が法的にいかなる問題を抱えているのかを検討した。この成果は、「国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)と日本」柳井俊二・村瀬信也編『国際法の実践 小松一郎大使追悼』(信山社、2015年)25-43頁に掲載された。
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