最終年度においては、これまで事務総長が果たしてきた機能のうち特に重要と思われる政治的機能に着目し、平成26 年度での前提的研究を踏まえた上で、憲章98 条に基づく活動と憲章99 条に基づく活動に分けて研究を行った。前者の代表例として、中心的活動の1 つであるPKO と政治・平和構築ミッションのような活動を、また、後者の例としては、事務総長が予防外交の一環としてさまざまな場面で行ってきた政治的・外交的活動を取り上げて順次考察した。今日、事務総長は、PKO や政治・平和構築ミッションの設置に多大なリーダーシップを発揮する。安保理の委任の範囲とはいえ、PKO の設置から憲章7 章の強制措置までをも提案する一定の裁量を付与されている。つまり、事務総長は、安保理による実施の一翼を担う機関としての役割を任されている。では、この裁量権はいかなる範囲まで認められるのか。これは、99 条に基づく独自のイニシアティブで行いうる活動においても同様である。この事務総長権限の範囲や正当性について、詳細に検討を行った。 これまでの研究を総括すると、平成26年度に、第1段階:国連憲章第15 章の研究―前提的考察―、平成27 年度は、事務局の組織面における研究を中心とする第2 段階:国連行政の研究―最近の傾向分析と事務局のあり方―、および平成28 年度は、事務局の機能的側面に着目し、それをまとめる第3 段階:事務総長権限の研究を行った。 3年間の主な研究成果として、研究報告としては、国際法学会2015年度研究大会(2015年9月19日)(発表題目:「国連組織における法秩序の展開」)での報告がある。また、書籍としては、『入門国際機構』(法律文化社、2016年)(共著)があり、論文として、「国連組織における法秩序の展開」『国際法外交雑誌』115巻2号(2016年)27-53頁を発表した。
|