本研究は、血統主義や重国籍の防止等のわが国国籍法の基礎となっている国籍の取得・喪失原理に関する基本原理について、各国法との比較による理論研究、聞き取り調査に基づく実証研究、現行国籍法に対する立法論的検討の3つの観点から、分析・検討を行うものである。 本研究の最終年度である今年度は、昨年度に引き続き、わが国国籍法の課題である国籍留保制度の意義について、フィリピンにおける日本とフィリピン間の重国籍の課題に取り組んでいるJFC(ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン)ネットワークを訪問し、聞き取り調査を行うと共に、重国籍を容認している台湾の状況との比較検討を行うために、台湾の東呉大学において「日台国籍法研究会」を開催し、台湾の国際私法研究者と意見交換を交わした。これらの聞き取りおよび意見交換から、わが国国籍法の重国籍に対する硬直的な姿勢と立法政策としての課題が明らかとなった。これらの成果は、近日中に公表の予定である。 また、国籍を巡る理論研究について、研究代表者が2014年9月に国際法学会第117年次大会において報告した、国籍を連結点とする国際私法上の本国法主義に関する報告について、本研究において得た知見を加えて検討し、国際法学会の機関誌である国際法外交雑誌に公表した。 さらに、本研究の研究分担者である青木は、本研究を基礎とした韓国法研究に基づいた著書『韓国家族法ー伝統と近代の相剋』を2016年3月に出版し、同書は本年3月に日本加除出版株式会社から第28回尾中郁夫・家族法学術奨励賞が授与された。
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