研究課題
平成27年度は、罪刑法定主義の要請が、個々の管轄権行使にとってどのような制約要因として作用するのかを検討するために、国際・国内判例、及び関連する条約の検討を行った。罪刑法定主義の要請は、憲法上の要請であると同時に、各種人権条約の実践を通じて、国際人権法上の要請としても理解されるようになっている。これらはより具体的には、法の予見可能性及び法廷地の予見可能性の要請として具体化されており、刑事法分野の管轄権行使に対して一定の制約要因として作用しうる。今年度は、実行・判例の分析を通じて以上の点を確認したうえで、さらに、実行上、このような制約がどのように克服・緩和されているかを検討した。一方で、立法・判例には、①犯罪行為地の法を適用するとか、犯罪行為地の法と法廷地法とを比較して軽い方の罪を適用するといった対処によって、法の予見可能性を充足し又法廷地の予見可能性の問題を回避するという方式、②法廷地の利益に対する侵害の意図をもって、法の予見可能性と法廷地の予見可能性の双方が充足されるとする方式が見られることを確認した。他方で、刑事法分野における条約は、特定の行為について、締約国に対して犯罪化と裁判権設定の双方を義務付け、それによって法制度の統一を図ることで、間接的にこのような罪刑法定主義の要請を充足する機能を果たしうることを確認することができた。これらの知見は、順次研究成果として公表する予定である。
2: おおむね順調に進展している
関連する判例・条約実行の収集及び分析が順調に推移したため
次年度は研究課題の最終年度に当たるため、これまでの検討結果を総合し、体系的な考察を行う予定である。
平成27年度は、予定していたセミナー出席のための外国出張を、学内業務のために取りやめることになったため、旅費のための予算を消化しきれなかったため。
繰越した予算については、28年度の外国出張(国際会議での報告を予定)で消化する予定である。
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Japanese Yearbook of International Law
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法学教室
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鶴田順編『海賊対処法の研究』
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Shotaro Hamamoto, Akiho Shibata & Hironobu Sakai eds., "L'être situé", Effectiveness and Purposes of International Law: Essays in honour of Professor Ryuichi Ida,
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