研究課題/領域番号 |
26380068
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
篠原 初枝 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (30257274)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アメリカ / 国際法学 / 冷戦 / クインシー・ライト |
研究実績の概要 |
戦後、アメリカでは国際関係論と国際法学が政治学と国際法学という別の学問領域として発展した。この研究では、その過程がどのように展開されていったかを、冷戦期を中心として探求する。戦間期に活躍したQuincy Wright, Manley O. Hudson, Charles G. Fenwick は 戦後もアメリカ国際法学会で活躍し、それぞれがアメリカ国際法学会の会長となるなど、戦後直後は中心的な役割を発揮していた。 しかしながら、冷戦が進んでいくとソ連との対立関係や、アメリカの外交政策の重要性が増したこともあり、さまざまなレベルで国際法学のあり方や、国際関係論のあり方の模索が始まった。このような学問的試みは、戦前にカーネギー財団が進歩的な国際法学の発展を支援したように、ロックフェラー財団によって戦後は進展していく。戦前の国際法学のあり方が、あまりに理想主義的であるという批判もあり、より外交実務に即した国際法学とは何なのかが求められるようになった。 そのようななかで、学問的な潮流としてイェール大学のMcDougalを中心に新たな国際法学の学派が隆盛となっていった。しかしながら、イェール学派はアメリカ国内では多大な評価を得て、政策を支える基盤となっていったが、国外や「民主的国際法学者」と自任するものたちには批判を受けることになった。このような国際法学における潮流の変化を考えるならばアメリカ外国政策にとって国際法学はその正当化のための道具立てに過ぎないのかといった問題意識もあがってくる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに、冷戦期のアメリカ国際法学について、日本語で学術雑誌論文をひとつと、英文の book chapter を仕上げており、冷戦期の国際法学がどのような時点で転換をしたかについては明らかにした。 たとえば、朝鮮戦争ではなく、キューバ危機というアメリカに直接的な安全保障上の死活問題をもたらす事件が、アメリカ国際法学会においてひとつの転換期となったことが明らかになった。そして、このキューバ危機にあって、戦間期には盟友であったWright とFenwickが異なる立場を示し決裂したことがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては二つの可能性が考えられる。 ひとつには、アメリカ国内におけるイェール学派をほりさげ、Harold Laswell などの政治学者との関係を明らかにするという学説史的に展開をより深く探求することである。 もうひとつの可能性は、キューバ危機においては、ライトをのぞきほとんどの国際法学者がアメリカの政策を支持したのに対し、ヴェトナム戦争をめぐってはアメリカ国際法学会で大きな論争が起きたので、時代を先に進め、ヴェトナム戦争とアメリカ国際法学界の潮流を検討することである。 また最終年度でもあるので、より大きなテーマとして掲げたアメリカ外交政策における国際法学と国際政治学についても、より考察を深めてみたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度12月以降に体調を崩し、予定していた海外出張や国内の研究出張ができなかった。また、書籍購入やRAを使っての研究もできなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初から予定していた文書収集の海外出張をおこない、そのために旅費を60万ほと使用する予定である。 2017年3月に発表した英語の分担執筆論文をさらに発展させる研究をおこなうため、 文書や書籍の購入に30万あてる。
|