研究実績の概要 |
冷戦期においてアメリカの国際法学者、特に、戦間期に「改革派」として活躍したQuincy Wright、Manley O. Hudson, Charles G, Fenwick が、冷戦という彼らが予期していなかった時代状況の変化にどのように対応したのかについて、研究をおこなった。 Wright についていうならば、彼は超戦争の勃発時には国連を依然として支持し、アメリカの朝鮮戦争への参加について肯定的な立場を示した。しかしながら、キューバ危機が起きるとアメリカがおこなった海上封鎖などの措置は国際法違反であるという議論を展開した。 戦間期にWright とともに「新しい国際法学」の旗手として活躍してきたFenwick は、キューバ危機が起きるとアメリカの政策を支持し、明確にWright に反対の立場を示すようになった。 この間、国際法学や国際関係論という知的状況全般においても変化が起きつつあった。新たに政策に実際に役立つ学問が求められ、また社会科学として国際政治学の理論化が求められるようになっていた。国際法学界においてもイエール学派といわれるグループが台頭し、McDougalを中心として政策科学としての国際法学を提唱する動きがみられていた。 これまで戦間期および第二次世界大戦期までしか及んでいなかった研究を、60年代にまで広げ、冷戦初期までの国際法学者の議論の推移をまとめ、英語での論文集に寄稿した。この論文集、International Law and Empire は、国際法史の泰斗、Prof. Koskenniemi を編者としている。
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