研究課題
平成28年度は、フィリピンが中国を相手として国連海洋法条約第15部の制度を利用して、仲裁裁判に紛争を付託した「南シナ海に関する仲裁事件」で、最終的な仲裁判断が出された。中国はこの仲裁において最初から出廷を拒否し、7月12日の仲裁判断後、即時にこれを拒否することを表明した。フィリピンの側から見て、この仲裁判断において注目されるのは、紛争を仲裁に付託することを決定した政権と、最終的な仲裁判断の時点での政権が異なる政策をとった点である。新しい政権の対中政策は大きく変化した。このため、フィリピン自身が、仲裁判断の履行を強く主張しない方針が鮮明になった。こうした状況は国際裁判において、あまり先例がないものである。こうした原告の側の政策変更が国際裁判への信頼にどのような影響を与えるかを含め、国際社会として、国際裁判所の判決や判断の法的拘束力をどのように位置づけ、制度としての有効性を維持していくかが問われていると考えられる。こうした新たな問題意識も踏まえて、国連海洋法条約第15部による紛争解決制度に基づく仲裁裁判所、国際海洋法裁判所、および国際司法裁判所の判決や判断を詳細に検討し、その結果を英語と日本語の論文として公刊することに力を注いだ。特にアジア地域の国の一つとしての日本の法の支配や国際裁判の尊重に関する立場を対外発信することにも務めた。9月にはメキシコでの招待講演の機会を得たため、この出張の際に、地域的な紛争の解決手段としての国際裁判に対する中南米諸国の考え方や国際裁判所の判決や仲裁判断の履行についての地域的協力についての意見の聴取を行う機会を得た。従来は中南米地域での紛争解決に、国際裁判所が効果的な役割を果たしてきたが、ニカラグア対コロンビアの海洋紛争で、国際司法裁判所の判決が紛争の解決につながらず、新たな事件として手続が継続しているので、それらの事案の考察も行なった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 8件、 招待講演 13件)
国際問題
巻: 659 ページ: 12,24
環境法政策学会編『生物多様性と持続可能性』
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J. Crawford et al. (eds.), The International Legal Order: Current Nees and Possible Responses
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Maritime Institute of Malaysia Issue Paper
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