研究課題/領域番号 |
26380070
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
最上 敏樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70138155)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際公法 / 国際立憲主義 / 時際法 / グローバル・ヒストリー |
研究実績の概要 |
研究は順調に開始された。初年度であり、文献および資料の収集ならびに読解・分析、さらに国内外の研究者との学術交流が中心に行われたが、前回科研費(課題「国際法の哲学的基盤」)との接続も円滑で、すでに研究の最大の眼目も見え始めている。すなわち、国際法の発展における「時間」の問題であり、それが国際法の歴史にどのような影響を及ぼしているか、過去の奴隷貿易や植民地支配に対する補償の問題が澎湃として起きつつあるのは国際法の史的構造のいかなる特性によるものなのか、等々である。いわゆるGlobal History研究の潮流が社会科学各分野で推力を得つつあるが、本研究もそれとの結節点を持って進めることになると思われる。 その際、前回科研費研究においても根幹となった国際立憲主義が、今回研究においても理論的な基盤となり大きな示唆を提供することになる。これは単に理論的基盤を反復して使用しているのではなく、国際立憲主義自体がまだ内容的に不確定な部分を持ち、部分的にはすでに批判の対象にもなりつつある(発表項目2に記載した、最上「国際立憲主義の普遍化可能性について」など)ことを踏まえている。国際立憲主義の全貌解明のためにはまた、国際立憲主義と集団安全保障の関係、国際立憲主義とマルティラテラリズムとの関係など、これまで結びつけられなかった領域に拡張して論ずることになる。 これらのすべてが時際法への問題意識に端を発したものであり、着眼は有効であったとの確信を深めている。 (なお、以下に記載する研究成果の一部は、平成23~26年度科研費「国際法の哲学的基盤」の平成26年度への繰り越し分業績として記載したものと重複している。テーマに連続性があるためである。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のとおり、予定どおりの進捗をしている。とりわけ、物理的な作業だけにとどまらず、研究の新展開のための理論的契機を把握できたことの意味が大きい。さらに、科研費ゆえに海外出張が容易になった分、海外の研究者との研究交流も恒常的に行われるようになり、その面での恩恵は非常に大きい。その恩恵を最大限に活用している。 自己評価を「おおむね順調」としたのは、過去1年、基礎研究に没頭して論文執筆の機会があまりなく、成果発表が十分ではないと自戒するためである。ただ、理論的に全く新しいところに取り組む研究であるので、一定の時間の後にまとめて成果を出す予定であるとご理解いただきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要にも記載したとおり、本研究は国際法史の根本問題にわたるものとなりつつある。国際法の、いわば「正史」として語られてきた先行研究をそのままなぞるのではなく、それが見落としてきたものが何であるか、とくに見落としてきた「事実」が何であるか以上に、掘り起こさずにきた「視座」が何であるかの解明に力点を置く。それにより国際法および国際法学が抱えてきた問題が全く新しい視角から明らかにされる可能性があり、それを懸命に追求したい。 申請者が研究計画共同委員長を務める国際学会ではすでに「国際法史」の研究部会を立ちあげ、強化しつつあり、ここに他国の知性も糾合してやっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年2月の海外出張に於いて節約を図り、当初予定金額より少額になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も海外出張が数回あるので、主としてそれに充当する。
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