研究課題/領域番号 |
26380079
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
細谷 越史 香川大学, 法務研究科, 准教授 (60368389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 成績不良を理由とする解雇 / 非違行為を理由とする解雇 |
研究実績の概要 |
今年度は、近年成果・能力主義的人事管理が強化される中で増加する労働者の勤務成績不良や非違行為等を理由とする普通解雇をいかに規制すべきかという課題について、ドイツ法の検討をふまえて解明しようと試みてきた。とくに日本では、裁判所が解雇の効力を一般条項である権利濫用法理(労働契約法16条)により諸般の事情を総合考慮して柔軟に判断するという特徴がある一方で、それゆえ、解雇の判断基準は不明確なままで解雇判断の予測可能性も低いという課題を抱えている。そこで、今年度は、日本の判例・学説の整理・検討を行い、日本の解雇規制の特徴や問題点を明らかにし、そのうえで、日本の解雇規制を今後再構築すべき指針(解釈論)を考究し、同時に、近年立法論として論じられ注目を集める「限定正社員」の解雇法理などについても考察し解明しようと試みてきた。こうした研究を主として判例を素材とした研究という形で公表することができたが、それにくわえて、私の分析の手法や自説を多角的に検討するべく、上記の一連の研究成果を研究会で報告し、会員の先生方との有用な議論を今後の研究に反映させることができた。 また、ドイツの勤務成績不良や非違行為等による解雇をめぐる判例・学説の整理・検討にも着手した。ドイツ解雇法の研究を日本の研究に反映させることで、日本の解雇法理を再構築すべき方向性を考察する際に有用な示唆を得ることが可能となった。さらに、こうした研究を基礎にした、日独の解雇法を比較検討した独文論文の執筆を進めることができており、これは次年度に公表予定である。こうした論文の発表は次年度におけるドイツでの研究調査の実質的で円滑な進展に資すると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、今年度の中心的課題である、労働者の勤務成績不良や非違行為等を理由とする普通解雇をめぐる日本の判例・学説の整理・検討を実施することができ、ほぼ計画通りにその内容を研究会報告や論文などを通じて公表することができた。また、同じく勤務成績不良などを理由とする解雇をめぐるドイツの判例・学説の法理の基本的な部分についても、次年度の研究の基礎とするべく、整理・分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、すでに取り組みを開始しているドイツ解雇法の研究を継続し、さらに発展させることに重心が置かれることになる。その際に、国内では入手が困難な独文資料を収集し、ドイツ解雇法の研究過程で生じる疑問や課題を解明し、ドイツ法の理解を深めるため、ゲッティンゲンやフランクフルトなどの現地で研究滞在を行う予定である。また、ドイツで入手する資料の分析や聞き取り調査の結果をふまえて、ドイツ解雇法の研究を充実させ精緻化したうえで、その内容を研究会で報告し、そこでの議論をふまえ、ドイツの勤務成績不良や非違行為等による解雇をめぐる判例法理と学説の理論の展開を分析・整理し、日本法への示唆を考究した内容を論文として公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、日本法の研究を発展させまとめ上げることに重心を置いたため、ドイツ法の研究がやや遅れ、ドイツ法資料の収集が十分には行うことができていない。また、今年度は学内学外ともに予定よりも多くの仕事等に従事する必要が生じたため、研究計画としての研究会や学会等に参加することが十分には達成できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度においては、ドイツ法の研究を進展させる前提条件として、とくに膨大な独文資料の収集・分析が重要な意味を持ち、また、ドイツ法の研究をより実質的に進展させるべく、ドイツでの研究滞在が研究計画よりも長期に及ぶ可能性が高い。こうしたことから、次年度使用額をふくめた助成金の効果的な使用を計画する次第である。
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