研究課題/領域番号 |
26380083
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80114370)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 労務供給契約 / 労働法 / 企業組織 / 雇用形態 |
研究実績の概要 |
主に、日本における労務供給契約に対する労働法的規制の歴史的研究を行った。 交付申請書において記載した<労務供給契約に関する3段階モデル>(第1段階は、繊維産業、炭鉱業、家内雇用などの多様な企業・生産組織が併存し、これに併せて、雇用や請負など多様な労務供給契約が併存する時代、第2段階は、機械制大工業が発展し、企業・生産組織の大規模化・直接管理化が進む中で、雇用が支配的になる時代、第3段階は、現代で、企業・生産組織の変動と雇用形態の多様化の中で、再び雇用や請負など労務供給契約が併存するようになる時代の3段階)に即して、日本における労務供給契約に対する労働法的規制のあり方に関する研究課題のうち、もっぱら、第1の課題である、19世紀(明治期)における企業組織と雇用形態のあり方から労務供給契約の多様性を確認し、民法の労務供給契約関連規定がどのような契約類型を規制していたのかを明らかにするという課題を遂行した。 具体的には、①明治前期の労務供給契約のあり方を、ギルド的同職団体解体に伴う「職工・徒弟条例制定問題」に関する研究史を整理する中で明らかにするとともに、②旧民法における雇用規定がどのような労務供給契約を念頭においていたのかを検討し、さらに、③現行民法の雇用、請負、委任の各規定の立法過程の検討から、それぞれの規定がどのような労務供給契約を念頭においたのかを明らかにした。また、<3段階モデル>の前提となる明治期における企業組織および雇用形態に関しては、経済史や労働問題における賃労働史や企業・生産組織の社会史の研究成果の摂取につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した課題のうち、主に第1の課題を遂行したにとどまり、第2の課題(20世紀<大正期・昭和期>において、第2次世界大戦以前においては工場法が、大戦後いおいては労働基準法および雇用関係法関連法規が労務供給契約に対してどのような規制を及ぼしてきたのかを検討すること)および第3の課題(21世紀<平成期>において、企業組織の変動と雇用形態の多様化の中で、実態と法規制の乖離がどうのよう進んだのかを検討すること)に関しては、資料の取集の段階に留まり、立ち入った検討はできなかった。その理由は、①年度計画にやや無理があったこと、②第1の課題の遂行にかなりの時間が割かれたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
日本における労務供給契約に対する労働法的規制の歴史的研究に関しては、第2の課題(20世紀<大正期・昭和期>)および第3の課題(21世紀<平成期>)の完遂を目標とする。 比較研究の対象であるイギリスにおける労務供給契約に対する労働法的規制の歴史的研究に関しては、<3段階モデル>のうち、19世紀(第1段階)については、すでに一定の研究蓄積があるので、20世紀(第2段階)および21世紀(第3段階)を中心に研究を遂行する。具体的には、①20世紀(第2段階)については、企業組織や雇用形態のあり方との関係で労務供給契約の現実のあり様を確認し、労働法的規制がいかなる労務供給契約をどのような理由で規制の対象としたのかを検討すること、②21世紀(第3段階)については、イギリスにおける企業組織の変動と雇用形態の多様化の実相を確認しつつ、実態と法規制の乖離がどのように進んでおり、何が課題になっているかを明らかにすることを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していたイギリスでの現地調査が、諸般の事情により、遂行できなかったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に遂行できなかったイギリスでの現地調査を本年度遂行する予定であるので、その分を本年度に主に旅費として支出予定額に計上している。
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