研究課題/領域番号 |
26380083
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80114370)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 労務供給契約 / 労働法 / 企業組織 / 雇用形態 |
研究実績の概要 |
主に二つの領域で研究を遂行した。 第1は、日本における労務供給契約に対する法規制の歴史的研究のうち、19世紀における労務供給契約に対する法規制の展開過程を交付申請書に記載した<企業組織と成員構成および雇用形態の3段階モデル>という「分析のモデル」にしたがって検討した。その際、19世紀日本を「江戸幕藩体制期」と「明治政府期」に区分し、さらに「明治政府期」を「維新法期」と「近代法期」とに区分して、それぞれの時期における労務供給契約に対する法規制の展開過程について、文献を読み込むとともに、19世紀の「江戸幕藩体制期」の部分を全体の「序論」とともに紀要に発表する原稿にまとめた(直近の『早稲田法学』に掲載予定)。また、昨年の12月に行った報告「『労働は商品ではない』とは何か-労働力の商品化と労働法」を準備する過程で、現行民法における労務供給契約関連規定(雇用・請負・委任)の立法過程における議論を旧民法およびボアソナード草案の関連規定との比較を交えて検討し、現行民法の労務供給関連規定が<賃貸借>のアナロジーで構想されたことを明にした。 第2は、イギリスのオックスフォード大学に約2カ月間、所属大学からの交換研究員として滞在し、文献調査およびインタビュー調査を行った。とくに、オックスフォード大学のHugh Collins教授、Mark Freedland教授、ケンブリッジ大学のSimon Deakin教授へのインタビューでは、現在のイギリスにおける労務供給契約に対する労働法的規制をめぐる論争について、その当事者たちから直接話を聞くことができた。また、これらのインタビューを通じて、第3段階におけるイギリスの問題状況を詳細に把握することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、イギリスでの2カ月間の滞在も含め、本研究課題の遂行にかなりの時間を割いた。にもかかわらず遅れが生じている原因は、交付申請書に記載した研究計画にやや無理があったことである。歴史研究と比較研究を一人の研究者によて遂行するためには、それなりの時間が必要であり、最終年度については、昨年度同様、本研究課題の遂行に集中し、一定の形にまとめたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
日本における労務供給契約に対する労働法的規制の歴史的研究に関しては、第1段階(19世紀<江戸・明治期>)についての研究成果を論文にまとめると同時に、第2段階(20世紀<大正・昭和期>)および第3段階(21世紀<平成期>)について、<企業組織と成員構成および雇用形態の3段階モデル>という本研究の「分析のモデル」にしたがって検討を行う。とくに、第2段階に関しては、企業組織の生産形態が工場制に移行し、そこでの雇用形態も間接雇用から直接雇用に転換することによって労務供給契約に対する法規制にどのような変化が起きるかを明らかにしたいと考えている。 他方、比較の対象であるイギリスにおける労務供給契約に対する労働法的規制の歴史的研究に関しては、第1段階について日本と比較できる研究蓄積があるので、第2段階と第3段階に集中して、日本と比較しながら、研究を遂行する。その際、企業組織や雇用形態のあり方との関係でどのような労務供給契約が法規制の対象になっていたのかを明らかにすることが重要であると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していたイギリスの現地調査に関しては、所属大学における学術交流協定によって実現できたので、本研究費を使用する必要がなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に使用しなかった旅費分を本年度使用予定の旅費に上乗せして、当初の予定より長い期間でのイギリス現地調査を構想している。なお、本年度のイギリス現地調査に関しては、すでに、ケンブリッジ大学から8月23日から9月18日までの期間での招聘状を得ており、体制は出来上がっている。
|