研究課題/領域番号 |
26380088
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
本庄 武 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (60345444)
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研究分担者 |
高橋 有紀 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00732471)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 更生保護 / 地域社会 / 就労支援 / 更生保護施設 |
研究実績の概要 |
2015年度は、以下のように国内外での調査及び研究報告、研究成果の公表を行った。 第1に、国内調査として、更生保護と地域社会の関係にスポットをあてて、かつて国立の更生保護施設である自立更生促進センターの設置時に住民の反対運動が起き、現在も民間の更生保護施設の移転建替えに絡み住民の反対運動が起きている福島県の実情について調査を行った。あわせて、就労支援、社会貢献活動、地域生活定着支援、薬物プログラムの実情など更生保護を取り巻く課題についても広く調査を実施した。 第2に、国外調査として、台湾における実情の調査を行った。台湾では量刑データベースの整備が進んでおり、統一的な指針の下で、社会内処遇を積極的に活用していこうとする姿勢が見られた。また検察段階でも条件付き起訴猶予が活用されていることが分かった。しかしながら、遵守事項設定の合理性などなお課題も残っている。 第3に、第1の調査を踏まえ、日本犯罪社会学会学術大会にて、テーマセッション「更生保護と地域社会」を企画した。研究代表者・研究協力者に加えて、福島保護観察所で建て替え問題の実務に当たってこられた実務家及び、福祉施設の地域コンフリクトについて研究している社会福祉の研究者に報告を依頼し、実情に即した議論を行うことができた。これに関する研究成果は、『日本犯罪社会学会第42回大会報告要旨集』誌上にて公表することができた。 第4に、2014年度からの調査を踏まえて、研究成果の公表を行った。特に、近時注目されているものの理論的解明が進んでいない社会復帰支援のあり様に焦点を当てて、『龍谷大学矯正保護総合センター研究年報』誌上において特集「刑事司法におけるソーシャル・インクルージョンの現段階」を企画し、論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は運用が開始された社会貢献活動について重点的に調査研究を行うことを予定していたが、社会貢献活動については、各地において様々なやり方が試行的に行われている段階であったため、評価を行うのは時期尚早と考えて、社会内処遇の基盤たる地域社会との協力関係に重点を置いて研究を実施した。 地域社会から理解を得て、良好な協力関係を築くことは、どのような社会内処遇を実施するうえでも前提となるべき事柄である。にもかかわらず、従来研究が手薄な分野であった。その分野について、実務家とも協同しながら研究を進めることができたのは大変貴重な経験であるとともに、本研究を実施していくに当たって重要であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は最終年度に当たるとともに、刑の一部執行猶予制度の施行が開始される。この制度は日本の新しい社会内処遇のなかで最も重要なものである。あらかじめ予定した執行刑期が満了すると、自動的に社会内処遇に切り替わるという制度は、これまで経験したことのないものである。対象者としても、従来のように必ずしも社会内処遇が適した人物を選別して対象とするということが難しい面がある。この制度の運用のあり方次第では、社会内処遇のあり方が大きく変容することにもなりかねない。 そこで刑の一部猶予制度を中心に、近年の更生保護において力を入れられている施策について総合的な評価を行うことにより、研究の取りまとめを行う予定である。
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