研究課題/領域番号 |
26380090
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
永井 善之 金沢大学, 法学系, 教授 (50388609)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 児童ポルノ / 単純所持規制 / 創作物規制 / セクスティング / リベンジポルノ / 刑法 / アメリカ刑法 / 表現の自由 |
研究実績の概要 |
本研究は、近時わが国でも漫画等の創作物も併せた刑事法的規制が検討されている児童ポルノ(以下「CP」)につき、表現の自由等の諸利益と調和した規制のための理論的根拠(法益理解)を探究するものであるが、3年の研究計画の初年度たる平成26年度においては、CP規制に約40年もの歴史をもち、その立法、裁判例並びに学説の蓄積の豊富なアメリカでの規制根拠論の分析を目的とした。これにより、1982年の連邦最高裁判決以来被写体児童の個人的法益の保護に限定されてきた規制根拠論が、技術革新による90年代末以降のインターネットやCG等の普及に対応すべくCPの「ようにみえる」画像をもCPとして規制する新立法により動揺され、従前の規制根拠論に基づき本法を違憲とする2002年の連邦最高裁判決の後にも、CPとの「判別が不可能な」ほどリアルな画像をCPとする再度の立法がなされるなど、伝統的な規制根拠論に揺らぎも生じているともみうる状況にあることが明らかとなった。なおこの分析過程で、規制根拠論の観点からも重要ないわゆるセクスティング(被写体の同意の元製造、送信される性的画像)やリベンジポルノに係る近時の同国での活発な議論もフォローしえたため、これらをも次年度以降の本研究に反映させる予定である。 なお平成26年度には、アメリカに加えイギリス、ドイツ、フランスにおけるCP規制の法的枠組も概観しえた。そこでは、CPのいわゆる単純所持罪がこれら全ての国で整備されていること(この点はわが国での本罪の新設(平成26年)の比較法的根拠とされてきた)、他方でこれらの国ではCP概念自体が比較的明瞭かつ限定的であって、本罪の新設でわが国のCP規制がようやく先進諸外国の水準に到達するという一般的な理解は必ずしも正確ではないことなどが明らかとなった。 以上の研究成果はいずれも、下記の学会報告や論稿により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄にて前述のように、平成26年度の研究進捗状況が当初計画通り(一部ではそれ以上)であり、また、これら成果の公表もなし得たことによる。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」欄にて前述のように、研究計画の初年度たる平成26年度の研究では当初計画を超えて、アメリカにおけるいわゆるセクスティングやリベンジポルノの規制状況についても概観しえたため、平成27年度ではこれに係る分析をも行ったうえで、これらの比較法的分析から得られた児童ポルノの規制根拠に係る理論の観点から、わが国におけるその規制の状況の分析・検討を遂行する予定である。これらの研究推進の方策・手法は当初の研究実施計画にほぼ沿ったものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度末に行った国外調査の費用につきその計算上と実際の執行額との間に僅かな差額(4,057円)が生じたが、この残額を時期的に同年度内には執行しえなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度への繰越額は4,057円にとどまることから、同年度の使用計画には当初予定からの変更はない。
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