本研究の目的は、国際人権法とその影響を受けたドイツの立法・運用状況の分析、それを踏まえた日本法の分析と比較を通して、少年矯正法における「最善の利益」原則の意義を体系的に解明することにあった。 この目的のもと、平成28年度は、前半において、平成27年度の作業を継続しながら、ドイツについて、インタビュー調査とアンケート調査の分析を進めること、日本についてインタビュー調査を実施することを予定した。また、後半において、研究の総括を行い、社会的発信を継続するとともに、研究成果の公表を、研究論文や犯罪社会学会・司法福祉学会での個別報告を通して行うことを予定した。 予定していたインタビュー調査およびアンケート調査のすべてを行うことはできなかったものの、日本の矯正実務家に対するインタビューを行うことができた。また、少年矯正法の領域で重要な役割を果たしている欧州レベルにおける国際人権法の制定に影響を与えた外国の研究者へのインタビューを実施することができた。その上で、これまでの研究の取りまとめを行なった。 研究成果の結果は、「少年矯正法の系譜と新法の課題」、「ドイツ少年司法における社会内処遇と更生保護」、「ドイツ少年司法における青年制度とその運用」などの論文にまとめ、公表した。また、「少年法・刑事法からみた18歳」、「再び少年法を考える――司法福祉学の原点から」、「少年法適用年齢の引下げ――ドイツとの比較から」と題する学会報告を行なった。
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