まず、本年度の検討によって判明した近時の動向について、フランスでは、再犯予防策及び過剰収容対策として、比較的軽微な犯罪に対して、保護観察を独立した刑罰として科す刑事強制や、必要的仮釈放を実現する強制下釈放の制度が創設されたが、未だ十分に活用されていない現状が明らかとなった。この状況は、社会復帰・保護観察官等、同制度の運用を担う人的資源の不足が主たる理由とされている。他方、フランスでは、重大な犯罪を行った者が依然として再犯の危険性を有する場合のために、保安監置制度が設けられているが、保安監置はほとんど実施されず、その後適用件数が1件増えただけで、2008年の制度創設以来数えても5件に過ぎない。 また、ドイツでも、再犯防止策として、さまざまな保安処分が導入されているが、2017年、テロ対策として、テロ監視対象者への電子監視器具の装着が目下検討されているところである。 以上の検討も踏まえた上で、本研究テーマである、再犯予防策における保安処分の位置づけを検討するならば、刑罰・保安処分の二元主義が採られている国においては、保安処分論に対する理念的批判は、現在ではそれほど強くないように見受けられる。しかしながら、とりわけ、保安監置や移動型電子監視といった、個別の保安処分に対する批判は根強く展開され続けている現状もある。さらには、保安処分を運用するにあたって、ハード面及びソフト面での資源の不十分さが至るところで露呈している点も指摘されうる。 日本への導入可能性については、理念的な問題をひとまず措くにしても、現段階では時期尚早の感が否めないが、保安処分は、各国で、テロ対策としての活用といった新たな局面を迎えつつあり、この動向も注視していく必要がある。いずれにしても、全面的な導入か、逆に完全否定かではなく、対象者類型ごとの導入可能性の検討が不可欠である。
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