今年度は、ドイツ少年法の家が設置されていない州における少年司法に関わる諸機関連携の実情を通して、少年法の家における諸機関連携の特徴を浮き彫りにするために、バイエルン州アウグスブルク市の少年局を訪問し、そこで取り組まれてきた諸機関連携について調査を行った。さらに、ベルリンで開催されたドイツ少年裁判所会議に出席し、ドイツの少年司法機関における諸機関連携の鍵となる担い手に関する理論的動向に関する情報を収集した。 日本については,引き続き,各種の研究会・学会に出席し,日本の少年司法における諸機関連携の在り方とその鍵となる担い手として弁護士を位置づけ、その妥当性を論証する報告等を行い,少年司法における諸機関連携のより詳細なモデルの提示に取り組んだ。 その結果、以下のことが明らかとなった。ドイツ少年司法において、最も自由剥奪制裁を多用するバイエルン州においても、非行少年への社会内処遇の実施に向け、少年局を中心として、少年係検察官、社会内処遇を実施するNPO、少年係裁判官との連携が実現していること。もっとも、発達障がいなどの特定の障がいを抱えた非行少年の場合、ドイツでは医師が連携の軸となること。アウグスブルク市においても、シュツットガルト市における少年法の家の取り組みへの関心がなかったわけではないが、それぞれの機関の担い手と顔見知りの関係があるので、一つ屋根の下に集まる必要はないという判断から、現在では関心がもたれてはいないこと。アンケート調査によれば、ケース会議は、権限を持つ少年係検察官や少年係裁判官には必ずしも意義あるものと見られてはいないが、ケース会議の頻度自体は上昇していること。また、日本においては、各地方でその地方ならではの少年司法に係る諸機関の連携が成り立っていることから、各地毎に連携モデルを考えるべきこと。
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