研究課題/領域番号 |
26380096
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
千手 正治 常磐大学, 人間科学部, 准教授 (00406018)
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研究分担者 |
冨田 信穂 常磐大学, 人間科学部, 教授 (60105062)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 被害者支援 / 刑事政策 / 刑事法 / 犯罪被害者 / ワンストップ / 多機関連携 / 比較法学 / 被害者学 |
研究実績の概要 |
本年度はニュージーランド、韓国及び米国に出張し、現地調査を中心とした研究を実施した。 ニュージーランドにおいては、民間被害者支援組織であるVictim Support(以下「VS」)を訪問した。そこで得た成果としては、①VSは罪種を問わず支援を提供しており、ボランティアスタッフによる支援が中心であるが、殺人、自殺、性暴力及び家庭内暴力の被害者等に対しては、有給のスタッフや特別な訓練を積んだボランティアスタッフが対応していること、②VSにおいて提供できない支援については、他の機関との連携により対応していること等が挙げられる。 韓国においては、大邱ONE-STOP支援センター及び金泉・亀尾犯罪被害者支援センターを訪問した。そこで得た成果としては、①大邱ONE-STOP支援センターにおいては、性暴力等の被害女性を対象として、医療支援、捜査支援、法律相談支援等を提供しており、名実ともにワンストップ支援センターとしての役割を果たしていること、②金泉・亀尾犯罪被害者支援センターでは、殺人、強盗、放火、強姦、傷害の被害者に対しては、経済的支援、医療支援、心理的支援等を提供し、法律相談は外部機関に委託するなど、実質的にワンストップ支援センターとしての機能を有していること等が挙げられる。 米国においては、サンディエゴ、フェニックス及びハワイにおける複数の被害者支援関連機関を訪問した。そこで得た成果としては、①サンディエゴのファミリー・アドボカシー・センターでは、同センターと市裁判所がビデオリンクでつながっており、被害者は同センターに居ながらにして裁判所に対して差止め命令等を申請できること、②ハワイの児童及び家族サービスネットワークは、警察との協定により、警察署内にいる家庭内暴力の被害者へのインテークを実施しており、これにより同ネットワークは迅速かつ適切な支援を提供できること等が挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していたニュージーランド及び韓国における犯罪被害者に対するワンストップ支援に係る現地調査については、前述の通り予定通り実施することが出来た。また本年度は新たに連携研究者として、本学のT.トレフソン准教授(被害者学)が本研究グループに加わり、前述した米国の複数の州におけるワンストップ支援の実情に係る現地調査を実施したため、米国におけるワンストップ支援について当初の想定以上の研究成果を得ることが出来た。さらにニュージーランドに係る研究成果は、研究代表者である千手が『比較法雑誌』に既に投稿し(韓国における調査結果への言及も含む)、米国における調査結果はトレフソン准教授がスペインにおける学術ジャーナルである『Journal of Victimology』に投稿することが決定している。これらの状況に鑑みれば、おおむね順調に進展していると評価出来ると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も、本年度に引き続き、ニュージーランド及び韓国における犯罪被害者に対するワンストップ支援に係る機関等を訪問し、前回の訪問時以降に疑問点として浮上したことを中心とした面接調査を実施し、併せて可能な限り現地において文献調査も実施する。 また平成27年11月に「性暴力被害者サポートネットワーク茨城」が開設するなど、我が国におけるワンストップ支援組織が拡大傾向にあるので、必要に応じて我が国において犯罪被害者に対するワンストップ支援を提供する機関を訪問し、面接調査等を実施する。 これらを踏まえて平成28年度は本研究の最終年度であるので、我が国における犯罪被害者に対するワンストップ支援の対象となる被害者を、少なくとも生命・身体に対する罪の被害者に拡大するために実践可能と思われる施策を提言することとなる。この点について、現時点においては、ニュージーランドにおけるVSや韓国における金泉・亀尾犯罪被害者支援センターにおける被害者支援がモデルケースとなるように思われるが、そもそも法制度や国の施策等において我が国と異なるため、単純に導入することは現実的ではないと考えられる。したがって我が国において最も理想的と思われる被害者支援機関の支援内容及び方法を基本として、これらの国々における支援内容及び方法の中で、我が国においても実践可能と思われる要素を分析・抽出し、これらを部分的に取り入れたものを最終的に提言することを予定している。
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