本研究は,わが国および欧米諸国における①電子情報技術を応用した各種システム・機器の普及状況と,これをターゲットにし,あるいは悪用した犯罪の実態と,②上記犯罪に対処するための捜査・立証上の課題,③それらの課題に応える新たな捜査・立証手段の開発・使用の実情を把握するとともに,④それらの捜査・立証手段に係る法的問題点を抽出し,⑤その適切な解決の在り方ないし方向性を探究することを目標とするものであるが,そのため,前々年度および前年度においては,(a)国内および(b)欧米諸国の問題状況に関する資料・文献の収集・分析,ならびに(c)関係機関・関係者からの事情聴取などを行ってきたが,最終年度である本年度においては,それらの研究を継続し,整理したうえ,それらを踏まえて,⑤の問題可決の在り方ないし方向性につき,特に,近時学説上のみならず,実際の裁判例上も争われ,見解が大きく対立していたGPS捜査を素材に,立ち入った検討を行った。その成果の一部は,平成29年3月15日に出された同捜査の適法性に関する最高裁判所大法廷判決に対する評釈の形で公刊した(井上「GPS捜査」『刑事訴訟法判例百選(第10版)』(別冊ジュリスト232号・2017年)64~69頁)が,より本格的には,これをさらに拡大・発展させ,論文等として公表することを考えている。
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