研究課題
最終年度に当る2017年度には,それ以前の2年間に積み重ねてきた研究成果を(また,2017年度の新たな成果をも補充しつつ)論文にまとめる作業に取り組んだ。まず,本研究の中心的な研究課題である「違法行為に複数の主体が関与する場合における差止請求権の発生要件・効果に関する考察」については,その一端として,所有権その他の物権(排他的支配権)が侵害される場合における要件・効果に関する成果を公表すべく,目下,複数の論考の執筆を同時に進めている(そのうちの1つとして,後記研究成果⑤)。また,上記研究課題への取組みにとって土台となるべき,差止請求権の一般的発生要件・効果に関する私見(違法侵害説)については,2011年にその概要を公にして以来,幸いにして多くの論者より批評を受けることができた。それらの批評のうち,特に私見に対する疑問や批判に答えるべく,またこれらと向きあう過程において前記研究課題に関する成果の当否を再検証するために,当該疑問・批判に応接する論考を執筆した(後記研究成果①②)さらに,差止請求権の一種たる妨害予防請求権の共通の発生要件である違法な侵害のおそれについて,その存否に関するあるべき判断方法を探求した(後記研究成果③)。すなわち,とりわけ適格消費者団体に付与される差止請求権を検討素材としながら,「どのような場合に,またいかなる判断過程を経て,当該請求権の発生要件たる違法な侵害のおそれ(当該侵害の発生する現実的危険性)が肯定あるいは否定されるべきであるか。」という,これまで我が国において原理的問題としては全くと言ってよいほど論じられることのなかった問題を取り上げ,その解明に向けた基礎的・比較法的考察を行った。なお,以上の作業を進める過程では,国内で開かれた複数の研究会に出席し,各研究会への参加者と上記各研究成果について積極的な意見交換を行った。
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浦川道太郎先生・内田勝一先生・鎌田薫先生古稀記念論文集『早稲田民法学の現在』
巻: なし ページ: 未定
H. Baum / M. Baelz / M. Dernauer (ed.), Information duties, disclosure duties and transparency obligations under German and Japanese private law (working title)
松岡久和編『新注釈民法 物権1』
法律時報
巻: 88巻9号 ページ: 112-117
巻: 88巻10号 ページ: 90-95