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2014 年度 実施状況報告書

行動経済学と証券規制

研究課題

研究課題/領域番号 26380106
研究機関筑波大学

研究代表者

木村 真生子  筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40580494)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード行動経済学 / 証券規制 / 消費者保護 / デリバティブ商品
研究実績の概要

本年は、行動経済学に関する基礎的知識の習得を行うことを目標にし、様々な文献購読を通じて概観を掴むように努めた。文献を読み進めるなかで、行動経済学から神経経済学の領域が分化していることが分かり、証券規制との関係では、神経経済学が証券規制とより連関があることを悟った。とりわけ、仕組債のような、複雑な金融商品の勧誘時の業規制について考える際には、神経経済学の知見が一定の役割を果たすという認識に至った。
なお、行動経済学分野の知識の習得にあたり、一橋大学で実験経済学を研究している竹内幹准教授に面会をしていただいた。同氏からは、わが国の行動経済学の研究の水準や、規制と行動経済学との連関、研究に必要な文献について貴重なアドバイスをいただくことができた。
他方で、当初予定していたカナダのDeavesレポートの読み込みは十分に行うことができなかった。しかし、これに代わって、わが国の従来の研究成果(特に、仕組債の勧誘販売と行動経済学の連関に関するもの)を読み、これらの研究を踏まえて、どのように自らの発展させるのかについて熟考した。そして、例えば、わが国のFX取引におけるロスカット制度と行動経済学の連関を研究することも有益であることを悟った。
また、米国、イギリス、フランス、OECDの投資者教育の方針及び方針策定までの経緯や背景についても調査・研究した。特に、米国やイギリスでは、投資者教育の方針を策定するにあたり、行動経済学者が政策立案に大きくかかわり、規制の必要性や実効性について検討が加えられたことを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

虚偽記載やインサイダー取引の局面で、「開示」との関係で問題となる“Materialityの要件に対する解釈が、行動経済学との関係でどのように変化するのかについては、それほど大きな影響がないというのが、米国の学説や判例を踏まえての理解である。
他方、行動経済学に関する基礎的知識の習得はある程度できたと思われるが、深い理解には至っていない。他方で、わが国の行動経済学と規制の関係を論じた研究成果を読み進めたことで、その研究の到達点を把握することができた。
また、行動経済学と証券規制の問題に絡み、「投資者教育」という視点が世界的に重要になってきていることを理解した。すなわち、殊に金融商品取引においては、人間は合理的に行動をとることができない傾向があるという行動経済学の知見を基礎として、投資者が証券市場において「自己責任」の原則を課されるためには、投資者の投資商品に対する理解能力や、金融資産の形成方法に関する知識の向上が欠かせない。この問題を実効的に解決するのが、公が主導する投資家教育である。しかし、投資者教育が実際に奏功しているかどうかについては、最近の実証研究からの批判がある。また、投資者教育を実施した事実を以って逆に、自己責任原則が重く見られることへの懸念もある。こうした批判があることを十分に理解しながら、引き続き行動経済学が証券規制に与える影響を考察する必要性も理解した。

今後の研究の推進方策

“Materialityの要件に対する解釈が、行動経済学との関係でどのように変化するのかについては、引き続き、米国の学説の動きを負う。また、同時に、米国法の影響が強いカナダにおいて、判例や学説でどのような影響が出ているのかについても引き続き注目をしていきたい。
一方で、具体的な証券規制との関係で、行動経済学の知見がどのように生かされているのかについての研究は、materialityの分析以上に時間を割いて行っていきたいと考えている。この分野で先進的な取組みを行っているイギリスの研究を中心を、EU諸国、オーストラリアなどにおいて、わが国のFX取引におけるロスカット制度のような、特徴的な証券規制がないかについて調べたい。併せて、これらの国々の証券行政そのものに対する行動経済学の影響も注視したい。
さらに、わが国のロスカット制度が行動経済学的な見地から説明可能かどうか、パターナリスティックな規制の業者及び投資者双方に対するメリットやデメリットについても分析・検討を行いたい。
なお、昨年度十分に読み込むことができなかったDeaves Reportの読み込みを続ける予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた北海道大学への出張を断念したことが、予算を消化できなかった1つの理由である。これは、1か月に及ぶカナダ・トロントへの出張、その他業務の事情を考慮して、計画を断念したことによるものである。一方、初年度に研究を進めるなかで、わが国では収集可能な研究資料に限界があると感じたため、次年度以降の海外調査費用として一定の資金を繰り越すこととした。また、外国語文献の収集にあたり、次年度以降の円高リスクを抑える必要性があると判断した。

次年度使用額の使用計画

本年度は、イギリスの法曹向け図書館及びカナダの大学又はシンガポールの大学において、電子データベースを主に利用し、議会資料その他研究に必要な文献を収集する予定である。このため、海外調査費用として、渡航費、宿泊費、現地交通費、現地調査費等に大半の資金を使用する予定である。また、前年度に引き続き、法と行動経済学に関する文献を購入する。さらに、高額にならなければ、必要に応じてデータベース利用契約を締結し、利用料を資金の中から支出したいと考えている。

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公開日: 2016-05-27  

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