初年度から、本研究課題の研究を遂行するための情報収集を継続的に行った。 比較法的な研究の手掛かりとして、家田崇南山大学教授のご協力も得て、シンガポール国立大学の研究者と議論するとともに、資料の提供を受けた。その上で、Sean McGinty名古屋大学特任講師(当時)とともに、国際的なワークショップにおいて(ソウル大学、ブツェリウスロースクール、名古屋大学に所属する研究者を中心とするもの)、「Derivative Action and Measures to Collect Evidences in the Civil Procedure」と題する報告を行い、参加者から貴重な意見等を受けた。 期せずして、補助事業期間の最中に、本研究課題が次回の会社法改正のテーマの一つとしても検討されるようになった。商事法務研究会の会社法研究会で取り上げられたものであるが、研究代表者も委員として参加して、議論の成果は、平成29年3月2日付の「会社法研究会報告書」に取りまとめられた。この際の議論を踏まえて、論文を公表した。 このような議論の動向を踏まえて、シンガポールに出向き、かねてからの共同研究者であるDan Puchuniakシンガポール国立大学准教授などと、議論をするとともに、今後の研究の方向性についても検討した。これらの一連の研究の結果、本研究課題は、会社法制に留まるものではなく、民事手続法の基本に関わり、より根本的な検討が必要であると考えるに至った。すなわち、証拠収集に関する基本的な発想が、英米法と日本法では異なっている。証拠は全て訴訟当事者が共有することを基本とする英米法の発想のもとで、当事者主義・弁論主義を基礎とするわが国において、米国法に由来する代表訴訟の証拠収集の在り方を同じ土俵で検討することは妥当ではないと考えられる。 この点を確認した上で、代表訴訟における原告株主の証拠収集のあるべき姿が模索されるべきである。
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