研究課題/領域番号 |
26380112
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
能登 真規子 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60378429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 身元保証 / 契約 |
研究実績の概要 |
本研究は、「身元保証と契約法理」と題して、わが国で慣行的に行われている身元保証を法的にどのようなものとして位置づけるか、「身元保証ニ関スル法律」(以下、身元保証法)その他の法規制を改新する必要はないか、改新の必要があるとするならば、どのような方向性がありうるのかを検討しようとするものである。 申請者は、平成23年度~平成25年度にかけて科学研究費補助金を得て、身元保証に関する実態調査を行った(若手研究(B)課題番号23730088「身元保証の実証的研究:企業の身元保証の利用と意識に関する実態調査」)。2014(平成16)年春の「現代の身元保証(1)―2012年度実態調査」(彦根論叢399号(2014年)156~171頁)より2012年に実施した質問票調査の回答の結果と分析を中心とした論考の公表を続けてきた。その終盤では、「身元保証への期待と現実」(A身元保証人への請求、B身元保証人に期待する役割)や「身元保証に関する意識」(A 身元保証制度への賛否、B 誰の身元保証人になるか)についても取り上げた(「現代の身元保証(6・完)―2012年度実態調査」同404号(2015年)頁未定)。 身元保証の形式化、形骸化が進み、身元保証はもはや契約としての内実を伴わないものに変容している。今日でも74.8%の会社が身元保証制度を実施し、身元保証書が提出されなければ、採用が見送られる建前でもあるが、「一切の責任を負う」と記載された身元保証書を用いる会社側も、通常は、すべての責任を身元保証人に負わせるつもりはない。また、まったく同一の書式が、債務の連帯保証人としての役割を期待する会社と全くの形式だと回答する会社のいずれでも用いられている。身元保証書の文言が契約の内容を示すと措定することは困難である。 以上のような点について、研究成果を公表した状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、平成26年度は、「調査によって提供を受けた身元保証書の文言を分析し、質問票調査によって明らかになった使用者(会社)側の意思(期待、思惑)との照合を行う」としていた。このような計画に基づいて、「現代の身元保証(3)―2012年度実態調査」(彦根論叢401号(2014年)4~19頁、「現代の身元保証(4)―2012年度実態調査」同402号(2014年)20~33頁、「現代の身元保証(5)―2012年度実態調査」同403号(2015年)202~217頁)において、170社より提供を受けた身元保証書の方式と文言を確認し、同時に、身元保証の契約締結について分析を行った。 また、平成26年度の研究計画の従たる課題としていた「身元保証によって作り出される使用者と身元保証人にどのような法律関係が形成されるのかに関連して、身元保証法5条によってもたらされる裁判官による規範設定に関する議論をまとめる」等としていた点についても、この点だけを取り出しての研究成果の公表は行っていないが、「現代の身元保証(5)―2012年度実態調査」(前掲)で言及したように、身元保証人への請求が現実に行われる場合の特色を確認することができた。 以上の研究を通じて、身元保証の実状についての理解が進んだため、平成27年度以降に予定している現代の契約法に関する議論の中での身元保証の位置づけの検討について、ある程度の指針を見出すことができた。 以上のとおり、平成26年度の当該研究課題の研究は、当初の研究計画どおりに進んでおり、進捗状況はおおむね順調であるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 次年度(平成27年度)から最終年度(平成28年度)にかけては、時代を経る中で生じてきた身元保証の議論の変化、および、現代の契約法に関する議論(とりわけ個人保証に関する議論)をふまえての、身元保証の現代的意義の検討を行う。特に、身元保証法5条によってもたらされる裁判官による規範設定に関する議論を検討する。 (次年度の研究費の使用計画) 適宜、文献の購入、今日では購入できない文献についての複写請求を行う。 研究成果の発信のためにも研究費を使用する見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった書籍等の年度内納品が困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(書籍)として使用する。
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