研究課題/領域番号 |
26380112
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
能登 真規子 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60378429)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 身元保証 / 契約 |
研究実績の概要 |
本研究は、「身元保証と契約法理」と題して、わが国で慣行的に行われている身元保証を法的にどのようなものとして位置づけるか、「身元保証ニ関スル法律」(以下、身元保証法)その他の法規制を改新する必要はないか、改新の必要があるとするならば、どのような方向性がありうるのかを検討しようとするものである。 報告者は、平成23年度~平成25年度にかけて科学研究費補助金を得て、身元保証に関する実態調査を行った(若手研究(B)課題番号23730088「身元保証の実証的研究:企業の身元保証の利用と意識に関する実態調査」)。2014(平成26)年より研究成果の公表を行ってきたが、「現代の身元保証(6・完)―2012年度実態調査」(彦根論叢404号(2015年6月)46-63頁)により、一区切りをつけることができた。 平成27年度中には、名古屋高裁平成26年2月13日判決(金融・商事判例1444号30頁)をめぐって検討を行い、研究会での報告も行った。この事案は、出向先会社に出向中の出向元会社の従業員が行った横領による損害について、出向先会社が出向者および出向元会社に対し損害賠償を請求したものであったが、出向先会社と出向元会社の間で作成されていた「出向者の取扱いに関する契約書」中の「補償条項」が身元保証法の適用される「身元保証」であると性質決定され、出向元会社の損害賠償の責任の有無と額が判断された点に特徴がある。身元保証の大多数は個人によるものであり、法人を身元保証人として身元保証法を適用する裁判例はきわめて珍しいが、出向者の取扱いに関する会社間の約定を、身元保証人の保護をはかるための片面的強行規定を含む身元保証法の規律の下に置くことについては一般化しがたいであろうという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画においては、平成26年度は、「調査によって提供を受けた身元保証書の文言を分析し、質問票調査によって明らかになった使用者(会社)側の意思(期待、思惑)との照合を行う」とし、平成27年度は、「前年度に行う、身元保証法の文言の分析および身元保証制度を採用する使用者(会社)側の意思(期待、思惑)に関し、検討結果を論文として公表する」としていた。 論文の公表は行っていないため、その点を重視するならば「(3)やや遅れている。」ということになる。しかし、【研究実績の概要】で述べたとおり、法人(会社)による約定に対する身元保証法の適用如何という問題につき検討し、知見を広げることができ、計画以上の進展があったともいえる。 以上より、平成26年度・平成27年度の当該研究課題の研究は、当初の研究計画そのままではないものの、方向性としては間違っておらず、進捗状況はおおむね順調であるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成28年度)においては、時代を経る中で生じてきた身元保証の議論の変化、および、現代の契約法に関する議論をふまえての、身元保証の現代的意義の検討を行う。 特に、身元保証法5条によってもたらされる裁判官による規範設定に関する議論を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国の法制度の情報収集に用いることを考えたが、金額が半端となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
台湾の文献の翻訳または校閲の費用とする予定である。
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