研究課題/領域番号 |
26380116
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齋藤 由起 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40400072)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保証 / 付従性 / 人的担保 |
研究実績の概要 |
保証債務の付従性は、主債務の履行を担保することを目的とする保証債務の存在目的から導かれる性質であるが、「付従性」に関する理解は学説においても一致しておらず、付従性の帰結として説明される事象の射程も、論者によって異なっている。「付従性」は保証(担保)制度にとって伝統的な問題である。しかし、現在進行中の民法(債権関係)改正作業において、保証債務の性質から当然に導かれる付従性の帰結(新448条2項)や付従性に基づく保証人の抗弁(新457条2項)が明文化されたことにより、この理論の射程は今後顕在化し、今後その重要性をますます増してくるものと思われる。 本年度は、個別の問題として、第1に、わが国で保証債務の付従性により説明される問題として理解される事象のうち、とりわけ、継続的的な関係から生じる不特定の複数債務を保証する根保証の主たる債務の範囲に含まれる被保証債権が、元本確定前に譲渡された場合に、被保証債権の譲受人が保証債務の履行を請求できるか(根保証債務の随伴性)について、検討した。また、第2に、主債務が不払いに陥った場合(主債務者について倒産手続きが開始された場合を含む)における保証債務の帰趨について、保証の担保目的と付従性理論のそれぞれが、どのような形で表れてくるのかについて、日本とフランスの現在の法状況を比較検討し、両国で用いられる「付従性」の理論の射程の相違を析出し、フランスにおいては、とりわけ倒産法制において、経営難にある企業の倒産手続の早期申立てを促進するために、付従性をいわば政策的に操作していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初予定していた付従性に関する一般理論の検討を網羅的に行うことはできず、その点では、当初の研究計画を変更したが、保証制度の根幹にかかわる具体的な場面・問題点について検討を行った。 根保証における主債務の移転に伴う附従性(随伴性)に関する最高裁判例の検討を行い、判例評釈の形で成果を公表した。また、主債務者が不払いに陥った場合における保証債務の帰趨について、日本法とフランス法の現在の法状況を比較し、附従性及び保証の担保目的の関係に関する考え方の相違について検討した。これについては、論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度十分に行うことのできなかった付従性に関する一般理論の検討を遂行するとともに、これまでに引き続き、主債務の内容(態様)に関する付従性に関する検討を進める。 主債務者の資産状況が悪化した場合における保証の担保目的と附従性の関係に関する日仏の理解を深めるために、フランスの倒産法の基本的なコンセプトについて深く理解できるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張予算を予定よりも低額で抑えられたため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
外国文献の購入費に充てる予定である。
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