研究課題/領域番号 |
26380116
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齋藤 由起 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40400072)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保証 / 付従性 / 倒産 |
研究実績の概要 |
本年度は、主債務者が不履行(倒産状態)に陥った場合における保証債務の帰趨について、中小企業融資のための個人保証(主として経営者保証)を念頭に置いて、日本法とフランス法の比較検討に関する検討を行った。これにより、フランスにおいては、とりわけ倒産法制において、経営難にある企業の倒産手続の早期申立てを促進するという政策的観点から、附従性の概念を操作したり、附従性を排除する規定を立法しているのに対して、我が国では、保証が主債務の履行を担保するための制度であること(担保目的)を重視し、主債務者の資力悪化や不履行リスクの拡大・実現といった事由については、「附従性」概念を介して、債権者に対して有利になるように、保証債務への影響の有無が決せられていることが明らかになった。 また、フランスにおいて、倒産手続における経営者保証人の保護という形で保証債務の附従性の例外が規定されていることに鑑み、複雑なフランス倒産法の全体的なコンセプト・全体像を明らかにするための研究を行った。 これらの研究を通じて、保証債務の主たる債務に対する別個債務性を解釈・立法の基礎におきながら、附従性の範囲を画するフランス法に対して、我が国の解釈論が、保証債務の別個債務性を軽視し、保証債務の担保目的を重視して、保証債務を物的担保に近づけて解釈しようとしているという、両国間の解釈の相違を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主債務者の資力悪化(倒産)の場合の保証債務の処遇について、総論的な形で、日仏の比較検討を行い、主に日本法に焦点を当てて、フランス語で論文を公表した。また、フランス倒産法における保証債務の処遇に関する理解をより深めるために、フランス倒産手続全体(救済手続、裁判上の更生手続、裁判上の清算手続)についての、近時の改正動向及び各手続きにおける、倒産債務者と債権者の処遇について総合的に検討した。
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今後の研究の推進方策 |
各論問題として、主たる債務者の期限の利益と保証債務との関係について検討するとともに、これまでの研究を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
フランス同時多発テロの影響により、2015年11月末に予定していたフランス渡航による資料収集及びインタビュー調査を中止せざるを得なかったため、予定していた旅費の執行が不可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
現地の十分な安全を確保できる限り、2016年秋に現地調査を実施する。
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