研究課題/領域番号 |
26380117
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 顯治 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50222378)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 契約のプロセス化 / 関係的契約 / 契約管理 / プロジェクトマネージメント義務 / 敷金 / 敷引特約 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、市場志向型救済法理論構築の手掛かりとして、システム開発契約紛争において近時注目されている「プロジェクトマネージメント」義務について検討した。 契約の適正化については様々な手法が存する。消費者契約法4条および8条以下に結実した締結過程コントロールと内容コントロールはその代表的なものである。もっとも、複雑かつ多段階な構造を持つ現代型契約において、これら従来の適正化手法が有効に機能するかについては問題がある。現代型契約においては、契約内容が締結時点において終局的に確定されず、契約それ自体がいくつもの段階に分かれた構造を持ち、プロジェクト当事者間の関係の進展に応じて内容の追加・改訂が随時求められることも常態として見られる。本年度は、複雑かつ多段階的構造を持つ現代型契約の典型としてシステム開発契約を取りあげ、契約はプロジェクト全体の管理手段と位置づけられるに至っていること、そのための新たな契約適正化手法が開発されつつあることについて研究し、論文を執筆した。本稿は平成27年中に公刊される予定である。 次に、市場志向型救済法が問題となる具体的裁判例として、賃貸借契約における敷引特約の有効性に関する最高裁判決(最判平成23年3月24日民集65巻2号903頁)を検討した。敷引紛争の社会的背景を明らかにした上で、近時の情報の非対称性に関する経済理論を基礎に、敷引特約の経済的合理性につき考察した。本稿も平成27年度中に公刊される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 第 1 四半期 (4月~6 月):国内外における一線のジャーナル・研究書・叢書に掲載された「契約の経済学」「契約法の経済分析」「行動経済学と契約法」分野における契約責任関連文献を収集・分析することが主眼であったが、おおむね順調に進展している。 (2)第 2 四半期 (7 月~9 月):国内外における一線のジャーナルに掲載された「契約の経済学」「契約法の経済分析」「行動経済学と契約法」分野における重要文献の収集・分析を継続する。特に、ドイツ法において登場している新たな研究動向に関連する重要文献に重点を置いて収集・分析を進めることが主眼であったが、ドイツ法については予想以上に研究の蓄積のあることが判明した。 (3)第 3 四半期 (10 月~12 月):第 2 四半期までに収集・分析された英米・ドイツ法の文献の分析も参照しながら、我が国の契約責任研究の問題点を継続的に明らかにし、英米・ドイツ法の理論状況との比較法的検討を進めることが主眼であったが、おおむね順調に進展している。 (4)第 4 四半期 (1 月~3 月):第 3 四半期までになされた作業を元に、契約法制度・救済法制度の対市場効果に関する我が国・欧米諸外国における先行研究に示された理論モデルの確定が主眼であったが、いくつかの重要なモデルを確認することができ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ研究はおおむね順調に進展していると言えるが、(1)ドイツ法における「法の経済分析」に関する研究書、例えば Habilitation Schriftenについては、なお継続的な収集・分析が必要であること、(2)これまでの内外の理論モデルと、本研究において構想されている新たな理論モデルの比較のもとに、いかなる点で本研究において呈示される理論モデルが新たな寄与をなし得るのかについての輪郭の確定を継続的に行う予定である。その際、損害賠償に止まらず、各種救済規範が市場に対し、いかなる影響を及ぼすかという観点からの理論分析に焦点をあてて検討を行いたいと考えている。また、欧米に実際に赴き、論文・書籍ではわからない先端的動向に触れてみたいと考えている。
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