平成29年度においては、非株式会社型ストラクチャーに関して、①平成26年度から一貫して続けているわが国の法制度や実務ニーズの研究、②平成27年度における英国での資料収集・実態調査の結果の分析やまとめ、③平成28年度における米国での実態調査と法制度の分析、という①~③の成果を踏まえて、全体の総括を行った。 ①わが国の非株式会社型ストラクチャーについては、民法上の組合(パートナーシップ)を利用する場合、事業を目的とするもの(事業型)と財産運用を目的とするもの(投資型)に大別されて種類別できることが認識できた。また、投資ファンドやリースにおいては匿名組合方式の利用も盛んである。しかし、匿名組合と合同会社の場合、業務執行者の責任のあり方について、米国の信認義務排除の考え方はわが国では直接導入すべきとの議論にはならず、契約自由とはいえ注意義務の軽減にも限界がある。また、合同会社は法人である故に米国のような税負担のメリットもなく、非株式会社型ストラクチャーを積極的に推進しずらい環境であることが確認できた。 ②英国の場合にはLLPの利用が広く浸透してきている状況にあるといえるが、米国のようなLLCを利用することによる産業の促進ではなく、従前からのprivate company制度が柔軟な制度設計を提供していることから、これが幅広く利用されている。 ③米国では特にデラウェア州においてLLPやLLCの場合、契約による信認義務の排除が広く認められているが、他方で、訴訟も多く提起されている。特に、上場しているLLPやLLCでは、上場株式会社と実体が異ならないにもかかわらず、投資家の保護が株式会社に比して格段に低い点は、契約自由の法的スキームのあり方に疑問が提起されている。
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