平成28年度に実施した研究の成果は主に次の4点である。 第一に、平成28年4月にドイツ・フライブルク大学において開催された大阪市立大学・フライブルク大学間の日独法学シンポジウムに参加し、「民事訴訟法学における伝統と革新:共有者の共同訴訟の必要性について」と題する報告を行い、固有必要的共同訴訟における学説の対立状況を紹介した。 第二に、平成28年4月に公刊された松本博之先生古稀祝賀論文集に「固有必要的共同訴訟における実体適格と訴訟追行権」と題する論文を公表した。考察の結果、ある者が訴訟追行権を有することは、その者が自らの訴訟行為により訴訟対象を処分することと同じ結果をもたらしうることを明らかにし、その結果、複数の者が共同で訴訟追行権を有する固有必要的共同訴訟の場合には、それらの者の一部が単独の訴訟行為により、訴訟対象を処分することと同じ結果にならないように、共同訴訟人が互いに牽制権を有していることを明らかにした。 第三に、平成29年2月に公刊された徳田和幸先生古稀祝賀論文集に「片面的独立当事者参加の訴訟構造」と題する論文を公表した。この論文では、片面的独立当事者参加においては、被参加人の訴訟行為により敗訴した結果、参加人に事実上不利な影響が及ぶ場合には、これを未然に防止するために、参加人が被参加人・相手方間の訴訟の被参加人側に当事者参加し、被参加人の訴訟行為を牽制することができることを明らかにした。 第四に、平成29年3月に公刊された加波眞一教授退職記念論文集に「複数の株主による責任追及訴訟における必要的共同訴訟の根拠」と題する論文を公表した。この論文では、株主と会社は相互に既判力が拡張される関係にあることから、ある者の訴訟行為により不利な判決効が他の者に拡張されないために、共同訴訟人となった複数の株主は、互いに牽制権を有する類似必要的共同訴訟となることを明らかにした。
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