最終年度には、高橋英治=大川済植「事実上の機関の法制の比較研究――事実上の機関の法理が日本の親子会社法制に与える示唆について(1)」法学雑誌65巻3=4号pp.331-352(2019年12月28日)を刊行して、ドイツ、EU、スイスと韓国、日本、英国、米国との事実上の取締役規制の比較研究の私の担当部分(ドイツ法、EU法、スイス法)の執筆・刊行を終えた。現在、日本法では、親会社等の責任を法律上どのように基礎づけるかが新たな立法課題として認識され、事実上の取締役をモデルに立法されるべきことが有力に主張されている 。 大川済植教授(島根大学法学部)とのこの共同研究は、ドイツ・スイス・ヨーロッパといったヨーロッパ大陸法圏における事実上の機関の法理の生成過程、英米法圏における背後取締役や支配株主忠実義務論の生成過程、日本・韓国といった東アジア法圏における事実上の取締役の法理の生成過程を比較し、日本の親子会社法制に対する示唆を得ることを目的とする共同研究である。 本研究では、ドイツ法を中心としたヨーロッパ大陸法圏における事実上の機関の法理の生成過程を高橋英治が担当し、英米法圏における支配株主等による経営関与行為への規制法理の生成過程、および東アジア法圏の事実上の取締役の法理の生成過程を大川済植が担当する。そして、これらの研究成果を踏まえて、大川済植が日本の親子会社法制への示唆を導く。大川済植教授が、2020年度は、この共同研究を完成に導く作業を主として行う予定である。
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