動態的法認識論を基礎としつつ、「財」と「担保」をめぐる基本概念および法制度に関するフランス法圏(フランス法、ベルギー法、ケベック法)の動向を比較検討しながら研究を進めた。 その結果得られた基本的な知見は、以下のとおりである。すなわち、法(秩序)の目的は、「各人に各人のモノを与えよ」との命題によって示され、長らく、富の分配は、「物権法」において、「物」の分配(先占・加工を中心とする原始取得と交換による承継取得)を秩序化することによりなされてきたが、財及びその活用の多様化が進行した現代取引社会においては、多様な「財」によってもたらされる「効用」の分配を秩序化することが求められているという点である。かかる視点から、「『活用(exploitation)』概念と『権能』論―PFIにおける公共施設等運営権を契機として―」法学研究88巻1号(2015年)29-56頁および「財産管理と物権法」水野紀子=窪田充見編『財産管理の理論と実務』(日本加除出版株式会社・2015年)63-85頁の2つの業績を公刊した。 さらに、ベルギーおよびケベックにおける研究拠点(ブリュッセル自由大学、マギル大学、ラバル大学)を確立し、フランス法圏でありながら、コモン・ローや統一法(UNCITRAL「担保付取引に関する立法指針」)の影響を受けて、独自の担保法制を展開している両国の動向を調査研究し、かつ日本法の法状況を報告する機会を得て(2016年11月16日ラバル大学、同月18日ラバル大学、2017年2月16日ブリュッセル自由大学)、議論を深め、2017年3月17日にラバル大学で開催された国際シンポ「無体財および無体化と対峙する担保法および財産法」において、上記知見に基づいて「日本法からの知見―価値への権利」と題する報告を行った。これらの成果は近く、日本語およびフランス語で公表を予定している。
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